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「超円安」終わらない日本が映し出す"暗い未来" 日米の金利差だけで説明できない本当の原因

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 17時0分

逆に現在にドルを売れば、近い将来にそのドルを買い戻すでしょう。そのため、投機筋の短期的な取引は長い期間で見ると、為替相場の動向を大きく左右するほどの影響はないといえます。実際に、日米の金利差と為替相場の関係をみても、中長期的にはそれほどはっきりした相関はみられないとされています。金利は景気循環に伴って上下するため、金利差が一方的に拡大するとも考えにくいでしょう。

しかし、経常収支の黒字・赤字による資金の流れは長い目で見ると大きな規模です。だから、短期的には金利差、中長期的には経常収支が為替相場に大きな影響を与えるのです。

日本の経常収支は黒字だが……

さて、ここからが本題です。近年の円安が起きているのは、日米の金融政策(金利差)だけの問題だと思われがちですが、それだけではありません。もっと根本的な部分、すなわち長期的な日本経済の低迷が円安に関係しています。先ほど紹介した経常収支を見てみると、日本の凋落がよく表されています。

2013年以降の日本の貿易収支を表したグラフです。折れ線グラフが輸入と輸出を示しており、その差額が棒グラフです。ゼロより下になると赤字、ゼロより上になると黒字です。2013年から約5年程度は、貿易赤字が続き、そのあとは貿易黒字に移行しているのが見て取れます。

しかし、2021年になると貿易赤字が拡大しています。背景にあるのはエネルギー関連、とくに原油関連の輸入額が大きくなったことです。

では、なぜ輸入が増えることが円安要因につながるのでしょうか。それは輸入に伴ってドル建ての支払いが必要となる=ドル買い需要が高まるためです。今後も、輸入による貿易赤字が続くと、日米の金利差が縮小方向に向かったとしても、円安圧力が続く可能性があることを押さえておきましょう。

なかなか円高にはならない背景

また、経常収支の動向を見ると、2024年現在黒字基調が続いています。年度単位では、2023年度の経常収支は25兆3390億円の黒字です。一般社団法人日本貿易会が昨年末に発表した内容によれば、2024年度は26兆9520億円ほどの黒字になるとも予測されています。さらに、2024年3月の経常収支速報値は貿易収支とサービス収支の黒字化に伴って、2月の2.6兆円から、約8000億円黒字幅を拡大しました。

一見すると、これは円安とは逆に働きそうです。しかし、経常収支の大きな黒字項目は第一次所得収支(直接投資収益や証券投資収益など、対外債権・債務から生じる利子・配当金の収支)です。ここで稼いだドルは外国での投資に再投資されることが多く、日本に環流していません。

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