地銀に迫る「新資本規制」、高収益モデルに逆風 高リスク資産の売却や還元抑制に動く地銀も
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 7時20分
ゴールデンウィークの谷間にあたる5月2日、ある銀行の株価が急落した。東京の地方銀行・きらぼし銀行を傘下に置くきらぼしフィナンシャルグループ(FG)だ。
前日に発表した2024年3月期決算の純利益は、前期比21%増の256億円。3期連続の2桁増益と上々の結果に見えるが、投資家を失望させたのは2025年3月期の業績予想だ。純利益は4.4%減の245億円と、一転して減益に転じる。地銀屈指の成長株に急ブレーキをかけたのは、新たな資本規制の導入だ。
資産積み上げに急ブレーキ
「ストファイの残高はもう伸ばさない」。きらぼしFG関係者はこう打ち明ける。
きらぼしFGの収益源は、LBO融資(買収対象企業の資産や収益力を担保にした融資)や不動産ノンリコースローンといったストラクチャードファイナンスだ。高い利回りや手数料を稼げるストファイこそが、好業績の立役者だった。
ところが、決算発表に合わせて、きらぼしFGはストファイの抑制を宣言した。新規実行は返済による減少分にとどめ、全体の貸出残高は横ばいを保つ。自滅行為にも映る急旋回の背景にあるのは、国際的な資本規制である「バーゼル3」の導入だ。
銀行の自己資本比率は、貸出金や有価証券といった資産ごとに抱えるリスク量を基に算定される。きらぼしFGのストファイはリターンに対するリスク量が相対的に低くみなされ、貸出債権額と同等か、それよりも少ない額しかリスクとして認定されなかった。
低リスク高リターンだったストファイに冷や水を浴びせたのが、2025年3月末から導入されるバーゼル3だ。新規制によってストファイのリスク量は順次引き上げられ、案件によっては債権額の2倍以上に膨らむ。従来通りストファイの残高を増やせば、自己資本比率はそれに反比例して押し下げられる。
きらぼしFGの自己資本比率は3月末時点で8.25%。地銀の中でも低い部類に属し、計550億円に上る優先株式の償還も控える。こうした中で「高リスク高リターン」になったストファイを抱えることは困難だ。
きらぼしFGは今後、自己資本比率に影響を与えるリスク資産を増やす代わりに、ファンドの運用受託やコンサルといった事業に軸足を移す。
株式にのしかかる重い資本賦課
バーゼル3は、メガバンクや一部の大手地銀が先行して導入している。本来はほかの銀行にも2023年3月に適用されるはずがコロナ禍で延期に。2025年3月、ようやくすべての国内基準行が導入する。
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