やたら「報連相」重視する人に伝えたい上司の本音 ただの責任逃れ?何のための報告かを考える
東洋経済オンライン / 2024年5月29日 15時0分
「他人の視点」を理解して相手の立場に立って考えることは、認知的な思考の中でも最も難しく高度な思考です。ビジネスの現場の「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」にも相手の立場に立って行うことが求められています。独りよがりで的外れな「ホウレンソウ」を上司にしないために、あるいは部下にさせないために、何を意識すればよいのでしょうか。
※本稿は今井むつみ氏の新著『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』から一部抜粋・再構成したものです。
ビジネスで「相手の立場に立つ」ために
心の理論とは、「ある状況に置かれた他者の行動を見て、その考えを推測し、解釈する(推論する)」という心の動きです。
例えば2歳の子どもが、テレビを見ていると想像してみてください。親は、そのテレビ画面が見えない場所にいるとします。その場合、親は当然、そのテレビにその瞬間に何が映っているかはわかりません。
しかし、幼い子どもは、実はそのことを理解できません。自分に見えているのだから、他の人にも見えていると思い込んでしまう。「他人の視点」を想像することができないのです。
これは誰もが通る道で、「他人の視点」がわかるようになるのはだいたい4歳くらい以降だといわれています。つまり、他者の視点や心の動きを推論するというのは、認知的な思考の中でも最も難しく高度なことだといえるのです。
この高度な認知的な思考を、目の前にいない人──例えば取引先や顧客にまで働かせること。これが、ビジネスにおいて「相手の立場で考える」ということです。
つまり、相手の立場で考えるのが苦手、という人は、この認知的な思考が苦手なためなのかもしれません。
それは誰のための「報告」か?
ビジネスにおいては、例えば「報告」ひとつとっても、「相手の立場で考える」ことができているかどうかで、その方法も、内容も変わってきます。ここでは、大企業で働く20代後半のKさんの例で見てみましょう。
Kさんは、新卒としてその会社に入社して以来、「ホウレンソウ」の重要性を繰り返し教えられてきました。そこで、その部署に配属されて以来5年以上にわたって、何かを進める際には事前に直属の上司に当たるA部長に時間を取ってもらい、「こちらの確認をお願いします」と書類を渡して、これから進める仕事について、説明するようにしていたそうです。
その日も同様に、A部長に時間を取ってもらい、ひと通りの説明をしました。すると、A部長から返ってきたのは意外な言葉だったといいます。
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