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スイカゲーム超えも「Coffee Inc 2」驚く人気の訳 ビジネスパーソンがハマる!日本人が1人で開発

東洋経済オンライン / 2024年5月29日 7時0分

スタバのようなコーヒーチェーンを経営するシミュレーションゲーム『Coffee Inc 2』の魅力に迫る(画像はApp Storeより)

一時はスイカゲームを抑えてストア1位に

『Coffee Inc 2』というiOS向けアプリゲームをご存じだろうか。2024年2月ごろに話題になって人気は急上昇し、一時は『スイカゲーム』を抑えて有料ゲームランキング1位を記録した。

【画像を見る】店を出す場所は世界中の都市から選べる。ベンチャー経営者もハマる「Coffee Inc 2」

本作はコーヒーチェーン会社を運営するゲームなのだが、単におもしろいゲームとしてゲーマーに注目されたわけではない。リアルに近い会社経営を学べる「ビジネス・シミュレーションゲーム」として、ベンチャー経営者などからも人気を集めているのだ。

通常のコーヒーショップ経営シミュレーションとなると、プレイヤーは店長といった立場になるものがイメージしやすい。ゲーム内容も、店内のインテリアや提供するコーヒーにこだわるなど、コーヒーを提供する・されるミクロの立場から物を見るものが親しまれやすい。

そうなるのも当然である。多くの人はコーヒーを淹れたり飲んだりする1人の人間であり、そういう視点のほうがわかりやすく楽しみやすいからだ。だが、『Coffee Inc 2』はあくまで経営者視点で物事を進めていく。

本作の基本的な流れは次のようになる。まずは銀行から融資を受け、そのお金で出店を行う。利益が出て資金が増えたら、借金を返してまた融資を受けて新たな店を出す。

店を出す場所もニューヨーク、シアトル、日本、ベルリンなど世界中の都市を選ぶことができる。また、店の管理は店長に任せることもできるため、いちいち面倒を見なくてもよいのだ。店内のインテリアにこだわることも可能ではあるが、それは本筋ではない。

事業が軌道に乗ってきたら、今度はオフィスを構え、店の管理や経理を人に任せられるようになる。賃借対照表では売上高や各種費用も細かく記載され、賃貸料、人件費、減価償却費、一般管理費なども細かく数値が出るのだ。COOに店舗管理を任せ、CFOに不動産管理などの業務を依頼するなど、重役たちがそれまでの業務を引き継いでくれるようになる。

まさしく経営者になるゲーム

株式上場すれば、ライバルチェーン店との本格的な戦いのはじまりだ。政策、物価、金利などマクロ経済の動きを見つつ、新商品の開発や投資でより会社を大きくし、時には選挙運動への寄付を通じて世の中を動かし、一大コーヒーチェーンを目指していく。

このように、『Coffee Inc 2』はまさしく経営者になるゲームなのだ。ゆえに、ベンチャー経営者に注目されるのは当然であろう。

しかも本作がおもしろいのは、株式投資などでも儲けられるところだ。『Coffee Inc 2』の有料コンテンツとして、オークション、スポーツ、不動産のビジネスも用意されており、コーヒー以外でも利益をあげることができる。

つまり、コーヒーチェーンの展開はあくまでお金を稼ぐひとつの手段でしかない。コーヒーが好きな人にとっては残念な知らせかもしれないが、本作はあくまでビジネス・シミュレーションなのでそれでよいのである、という姿勢なのだ。

インディーゲーム制作は大きなムーブメント

『Coffee Inc 2』はアメリカ在住の野田智博氏が1人で開発したという。野田氏はソフトウェアエンジニアではあるが、ゲーム開発の経験はそれまでなかったという。

実はこういったゲームの登場は、現在のゲーム業界における流れの中心といえる。2000年代後半あたりから、ゲーム業界では「インディーゲーム」が流行しており、日本でもこの言葉はとても有名なものとなっている。

インディーゲームとは、独立した個人や小規模チームが制作するゲームのこと。大きな企業が作るゲームは高品質なことが多いものの、やはりマス受けを狙うなどして良くも悪くも安定した作りになりやすい。ゆえに自分たちの考えるゲームを作るため、独立して行動する人もいるのだ(ただし、もともとインディーゲームの定義は曖昧なうえ解釈が拡大化されつつある)。

例えば、世界一売れたゲームである『マインクラフト』や、TVアニメ化される『天穂のサクナヒメ』も元々はインディーゲームといえる。任天堂もソニーもマイクロソフトもインディーゲームクリエイターを支援しており、大きなムーブメントの1つといえよう。

インディーゲームの歴史はその流行よりさらに古いが、インターネットの発達が重要なターニングポイントになっていると考えられる。仮に個人でテレビゲームを作ったとしても、パッケージで流通することがメインの時代であれば、世の中に出回るようにするのは容易ではない。

しかし、ダウンロード版が普及したおかげでさまざまなゲームが販売しやすくなったうえ、PCやスマホの普及で対応プラットフォームもどんどん増えていった。インディーゲームが流行したというより、環境の変化で個人や少人数でゲームを作る人たちの才能が世に出やすくなったというべきかもしれない。

「自分がやりたいゲームを作った」

『Coffee Inc 2』はまさしくインディーゲームの流れど真ん中のヒット作品といえる。野田氏は他媒体のインタビューで「自分がやりたいゲームを作ろうと思って作った」と語っているが、これは偶然にも筆者の知人であるインディーゲームクリエイターもほとんど同じことを口にしていた。

そういった情熱を持つ人が新しいインディーゲームを作り出し、大企業にはなかなか制作できない斬新な作品として世の中に受け入れられる。今後も新たな才能や、誰もまったく知らないゲームが世に出てきて、われわれを驚かせてくれるのだろう。

渡邉 卓也:ゲームライター

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