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「住宅は2度買え!」億ション時代こそ正しい深い訳 リスクを回避できる「サンドイッチ戦略」とは?

東洋経済オンライン / 2024年5月30日 10時30分

「これからの住宅購入の常識は、これまでとはまったく違うものになる」というのが、経済記者/アナリストとして長年不動産市場を研究・分析してきた山下努氏の考え方だ(写真:genzoh/PIXTA)

「住宅購入は人生で一番大きな買い物」それは令和の現在も変わらないが、東京23区では新築マンションの平均価格が1億円を超えるなど、一部のエリアでは不動産価格の高騰が止まらない。

不動産市場の変遷、政府や日銀の動向、外国人による売買などを踏まえ、「これからの住宅購入の常識は、これまでとはまったく違うものになる」と、長年不動産市場を研究・分析してきた不動産ジャーナリストの山下努氏は言う。

山下氏の新刊『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』では、「マイホームはもはや一生ものではない」「広いリビングルームや子ども部屋はいらない」「親世代がすすめるエリアを買ってはいけない」など、「新しい不動産売買の視点」を紹介し、「損をしない家の買い方」をあらゆる角度から考察している。

今回は、その山下氏が「サンドイッチ売買」と名づけた「古い常識を覆す、新しい住宅売買の考え方」を紹介する。

災害大国日本で「一生ものの家」を持つことのリスク

これから家を買おうとする人、あるいは将来家を持ちたい人は、次のような疑問を抱いているはずだ。

【書籍】「マイホームはもはや一生ものではない」「広いリビングルームや子ども部屋はいらない」「親世代がすすめるエリアを買ってはいけない」など、「新しい不動産売買の視点」を紹介し、「損をしない家の買い方」がわかる話題の書

「どこに、何を、いくらで、いつ買えばよいのか」

この疑問に対する正解を答えるのは簡単なことではない。

予算や通勤、家族構成といった個人的な事情もあるだろう。

そのうえ、日本は超がつくほどの「災害大国」だからだ。

国土交通省が2020年に公表した、各都道府県内の総人口に対する災害リスク地域内に居住する人口割合は、東京都で95%、愛知県が96%。日本はどこに住んでも「危ない」 状況だ。

災害リスクには洪水、土砂災害、地震、津波があるが、これに火山の噴火などは含まれていない。

また、2024年元日に大地震が襲った能登半島は、ごく一部を除いて安全なエリアとされていた。

30年内に首都直下型地震が起きる確率は7割とされる。

どれほど科学が進歩しても、「大地震がどこで、いつ、何時ごろ起こるのか」は、正確に予測することはできない。

このように、災害リスクが極めて高い我が国で、マイホームを持とうとするにあたって、結論はこうだ。

「家は一生に一度の買い物」という考えを捨て、人生で2度以上売買する。

「家を買うこと」は「災害リスク」と切り離せない。

「家は一生に一度の買い物」という考え方は、すなわち「30年以内に首都直下型地震の起こる確率は7割」などとされる災害リスクを、自分でローンごと引き受けることになる。

そう考えると、今の日本で「一生ものの家」を買うのは恐ろしすぎる選択ともいえる。

「住宅取得→売却→賃貸居住→住宅取得……」を繰り返す

リスクを小さくするためには、住宅(マンション)は10~15年で買い換え、人生で2~3回買うことをおすすめする。

この手法を、筆者は「サンドイッチ売買」と名づけた。「住宅取得→売却→賃貸居住→住宅取得」と、賃貸を挟んだ住宅取得戦略だ。

できれば安値期に購入し、高値期に売り、売却益を確定したうえで賃貸に住む。相場が下がったところで再取得する。

こうしたサイクルを2度、3度と繰り返すのだ。

「そんなことをするのは面倒」と感じる人もいるだろう。

しかし、少なくとも「家は一生に一度の買い物」という思い込みだけは捨てて、「10~15年単位の住み替えプラン」をつねに念頭においてほしいのだ。

「サンドイッチ売買」は、現在の資産市場に対応した売買術であり、災害やインフレリスクにも対応している。

時限立法、景気対策、自民党税制調査会、政府税制調査会などの動きを見れば、住宅関連の税制はくるくる変わる。

とはいえ、住宅ローン減税の期間は10年間が基本で、築15年程度でお金のかかる大規模修繕を迎える。

このことを考えると、やはり10年から15年で売買を考えるのがベストといえる。

たとえば、買う側は築15年ぐらいの大規模修繕が終わったばかりの中古物件を購入すれば、巨額の修繕費は前の所有者の負担で済む。

反対に、売る側は大規模修繕前に売ってしまったほうが、持ち出し(負担)が少ない。

築15〜20年のマンションがお買い得な理由

築15年程度がマンションの売買適時である理由は、住宅ローン減税や大規模修繕期の指標ばかりではない。

いまから15年から20年前は、まだマンション供給業者が多数存在し、価格面や品質面でも競争があった。質のよい物件が比較的安価で供給された最後の時代だったからだ。

土地そのものも今より安かったし、円高による建設資材インフレもなかったので、今よりよいマンションがつくれたのだ。

そういった意味では、あえて築15年から20年の物件に目をつけるのは当然の選択だろう。

世界的な資源高、インフレ、円安など、悪条件がそろい、建設資材や建築費は過去数年、大きく値上がりしている。

これまではマイナス金利政策を背景に、大手デベロッパーも地価や建築費、建築資材の高騰を価格に上乗せできたが、2024年から日銀は利上げモードに入り、それも難しい状況となるだろう。

また、これまでは「夫婦+子ども2人」など、最大の家族数を想定して家を買ってしまう人が多かった。

とくに現在のようなマンション1億円時代において、それは危険行為といえる。

トータルで見れば夫婦2人の暮らしが長いのだから、子育て期が終われば、子ども部屋は不要になる。子育て期(家族の多い時期)の10~20年は、できれば賃貸住宅でクリアしよう。

家族が増える、あるいは減るタイミングで、相場にいい動きがないなら、とりあえず自宅を引き払って賃貸に出し、家族数に合わせた賃貸住宅に住む方策もある。

自宅の近くなら、賃貸に出した物件に戻るハードルも低い。分譲時代に育んだ地域との絆も維持できる。

相場がよければ、値上がりした所有物件を売って利益を確定させ、同じマンション内の賃貸物件に引っ越す戦略もある。家賃は分譲価格ほど値上がり率は高くないので、この戦略は十分可能だ。

家は「安値圏」で買って「高値圏」で売る「金融商品」

若いカップルの間では、築15年前後の中古の分譲マンションを買うブームがひそかに起きているという。

時流を読み、合理的な選択をする人たちが増えている証拠だろう。

いずれにせよ、「マイホームは一生もの」という過去の常識を捨て去り、住宅は「金融商品」だと認識しよう。

高く売れる物件を安値圏で買い、高値圏で売って利益確定する。その後はしばらく賃貸住宅で暮らし、安値圏の買い時を待つのがよい。

この 「サンドイッチ売買」の基本は変わらない。

「家は一生に一度の買い物」という考えを捨て、人生で2度以上売買する。このことを、再度肝に銘じておこう。

山下 努:不動産ジャーナリスト

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