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裸の少女をミキサーで「おぞましいアート」の背景 漫画やアニメの世界でも不健康な主張が台頭

東洋経済オンライン / 2024年5月30日 17時0分

1980年以降に「おぞましいアート」が増えた背景にあるものとは(写真:sergeyishkoff/PIXTA)

しばしば「意味不明」「わからない」とされる現代アート。しかし、そこには必ず社会状況の反映がある。むしろ、現代アートを見ることで、より深く時代や世界について考えるきっかけにもなる。そこで本稿では、1980年に入って「おぞましいアート」が増えてきた背景について『「わからない」人のための現代アート入門』より、抜粋して紹介する。

「おぞましいアート」が異様に存在を主張

ビフォー1980のアートは、どのようなものであれ明解で明晰でした。整合性が保たれていて一貫性がありました。ところがアフター1980になると、アートは怪しげで不明瞭なものになっていき、そして、どういうわけか、世界同時多発的にグロテスクな表現や子どもっぽい表現、意図的に幼稚な表現、残酷な表現が目立つようになります。

それらは「おぞましいアート(アブジェクトアート)」と呼ばれ、異様に存在を主張していきました。

おぞましいアートの代表格にはロバート・ゴーバーやマイク・ケリーらがいます。彼らの作品は、言葉を選ばなければ、ほとんど変態です。たとえば、ゴーバーの《無題》は、壁から唐突に人間の裸の下半身だけが生えている作品です。見る者は、何のことかまったくわからないままに、その“あり得ない状況”に不条理な感覚を覚えさせられます。

ケリーのキーアイテムはぬいぐるみです。愛おしそうにぬいぐるみを縫ったり、捨てられたぬいぐるみを大量に拾い集め、それでオブジェをつくったりしています。

性の属性を先入観で決めつけてはいけないとはいえ、むくつけき成人男性がぬいぐるみに執着するというのは(当時にあってはなおさら)やはり違和感を覚えさせます。ケリーは見る者に違和感を覚えさせることによって、ジェンダーや幼児性を意図的に混乱させているふしがあります。

裸の少女たちがミキサーに入れられた作品

日本でもおぞましいアートが立ち現れました。会田誠の《ジューサーミキサー》はショッキングな作品です。何百人何千人という裸の少女たちが巨大なミキサーに入れられており、下のほうはミキサーがすでに動いたためか血で染まっている、という絵です。会田はこのような挑発的な作品を次々に発表し、ときに物議を醸しました。

加藤泉が描くのは、胎児のような奇妙な生物です。頭が大きく、ギョロリと真ん丸な眼がついている一方、身体はひどく弱々しい。グロく不気味で、どこか性的なニュアンスも漂っています。加藤は執拗なほどにこのテーマを追い続けています。

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