阪急が参画表明、日本と「マニラ都市鉄道」の40年 「オールジャパン」の限界露呈した建設の歴史
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 6時30分
そのため、これまでに3度の円借款による改修が行われている。まず、1994年の「LRT1号線増強事業」(約98億円)では、丸紅がスイスのABBと組み、設備更新および韓国ヒュンダイ(現・ロテム)製の車両4両(2連接×4)編成7本を導入した。しかし、車両のトラブルが絶えず、大きな輸送力向上は実現しなかった。
次いで2000年には「LRT1号線増強事業II」(約223億円)として、住友商事と伊藤忠商事が受注し、日本(日本車両及び近畿車両)製車両を4両(2連接×4)編成12本を導入、地上設備の更新を三菱重工が行った。それでもラッシュ時間帯の混雑はかなりのもので、積み残しもしばしば発生していた。
日本関与の車両でやっと「あるべき姿」に
1号線の運行は2000年以降、運輸省(DOTr)の下局である軽量鉄道公社(LRTA)に移り、メンテナンスが外国企業に委託される時期を経て、2015年からは財閥系企業によって設立されたライトレール・マニラ・コーポレーション(Light Rail Manila Corporation、LRMC)がコンセッション契約により運行やメンテナンスを行い、LRTAは施設を保有するのみという体制に改められ、輸送安定性が向上した。2020年からLRMCに対して住友商事が出資参画している。
そして、3度目の円借款となるのが冒頭で触れた「マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張事業」だ。後述するLRT2号線の延伸と抱き合わせになっていた本事業で、1号線に対しては、車両調達及び南方延伸用の車両基地整備が盛り込まれている。120両という最大規模の車両増備はマニラ市民の悲願とも言えたが、そのデビューは借款契約締結から10年もの月日が流れた2023年7月まで遅れた。
2024年に入っても残る車両の納入が続いていたが、年初の時点では従来のBN製、ヒュンダイ製車両は営業運転から外れており、これはLRT1号線が日本製、または日本製機器を搭載した「日本の血」が入った車両に統一されたことを意味する。ラッシュ時には約3分間隔で運行されており、従来に比べて混雑が緩和された。雨漏りなどの初期トラブルには見舞われたものの、開業から40年、紆余曲折を経ながらも本来あるべき形に達したといえる。
延伸用の車両基地については、清水建設と現地企業のJVが受注した。ただ、これもほかに入札企業がなく、価格面からフィリピン側との契約交渉に時間を要した模様である。
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