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「Netflixストーカー実話」海外と日本で温度差の謎 売れない芸人が主人公「私のトナカイちゃん」

東洋経済オンライン / 2024年6月1日 12時30分

インパクトがあり過ぎるこのキャラクターを巡って、一部の視聴者がネット上でモデルにした実在の女性を特定する事態まで引き起こしています。その実在の女性は素性がさらされたことで名誉を傷つけられたと主張する一方で、YouTubeの人気番組に顔出しで出演して作品を批判、さらに配信したNetflixを相手に訴訟を起こそうとしています。アメリカやイギリスのメディアが報じ続けている様子からは、ゴタゴタはまだ収まりそうにありません。

そもそもストーカー被害に遭った男性本人がドニー役を演じていることにも驚きます。役者かつコメディアンでクリエイターのリチャード・ガッド自身の体験をもとに創作したドラマなのです。もともとガッドが一人芝居で語っていたストーリーでした。その一人芝居がスコットランドで開催される世界最大級の芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」でステージ・エジンバラ賞を受賞したことでさらに話題になり、Netflixでドラマ化されたというわけです。ガッドはドラマの脚本も手掛け、エグゼクティブプロデューサーも兼ねています。

ガッドはどこまで実話に基づいているのか全てを明らかにしていませんが、この作品はストーカー被害話だけに終わりません。主人公のドニーが心の奥底に葬ったトラウマと向き合う話へと転換していきます。ストーカー女性マーサと歪んだ関係性に陥った背景は、まさにそこにあるのです。4話から一気に明らかになっていきます。

自尊心の低さを露呈する主人公

中身に少々踏み込むので、まだ作品を視聴していない方がここから先を読む場合、ご注意ください。

4話で描かれるエピソードは夢に出てきそうなショッキングな映像です。心理描写まで重くて辛く、生々しく描かれています。端的に言うと、男性の性暴力被害です。弱者とも言える主人公のドニーが権力者の男性から性被害を受けた苦しみは、性的嗜好の混乱まで生み、自己破壊的な行動を起こす負のスパイラルに陥らせます。いたずらに扱ったようには決して見えないのは、後の6話でドニーが自身と対峙する公開告白の場面があるからだと思います。約10分間にわたる彼の告白は「何者でもない」と感じる自尊心の低さを露呈することから始まり、この作品最大の見せ場となります。

旧ジャニーズ事務所の創業者による性加害騒動以降、男性の性被害も語られることが少しは増えたものの、ドラマの中で力関係から生じる男性の性暴力被害の問題と真摯に向き合って表現されることはまだ珍しく、これがこの作品が評価される理由の1つになっています。

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