今後10年間で出生数が半減「最悪の悪循環」の正体 「少子化」「老後不安」がお互いを悪化させている
東洋経済オンライン / 2024年6月1日 13時30分
筆者は大学生向けに講演することもあるのだが、最近では大学生たちからも「老後不安」という言葉を耳にするようになった。
少子化の要因として、「老後不安」に起因するお金の不安があることは間違いなさそうだ。
2000万円という数字は「蜃気楼」のように遠のく
しかしながら、みんなが資産形成に精を出して、無事に2000万円貯めたとしても、老後の問題は解決しない。
みんながお金を貯めるほどに、老後安心できる金額が蜃気楼のように逃げていくからだ。すでに物価上昇が起きているが、物価はさらに高くなり、2000万円では足りなくなってしまうだろう。
拙著『きみのお金は誰のため』では、この老後の問題について、先生役の“ボス”と呼ばれる人物が主人公・優斗に次のように説明している。
「僕もほんまにそう思うわ。少子化によって働く人の割合が減るってことは、(イス取りゲームの)イスが減るということや。その一方で、高齢者は増えるから、介護職の数を今後20年で3割増やさんとあかんと言われている。仮に、増やせたとしても、他の仕事をする人の数が減る。他の分野で物やサービスが足りなくなるんや」
優斗はため息をついた。
「無理ゲーですよ、それ。お金貯めても、物が足りなければ、値段が上がるんですよね。お金をたくさん持っていたらイスに座れるけど、誰かがイスからはじき出されるってことでしょ?」
まさに、相手を蹴落とすことでしか勝ち残れないサバイバルゲームだ。みんなで協力して生き残ることなんてできやしない。
「1億2000万人もおると、イスの数が減っていることにも、誰かをはじき出していることにも気づかへん。みんなが、お金を貯めさえすればいいと思ってしまうんや」
「イスを買うお金を貯めるんじゃなくて、すぐにイスを作ったほうがいいですよ」
「優斗くん、それなんや」
ボスはニカッと笑った。
「僕らは、未来のためにイスを作らんとあかんのや」
(中略)
「でも不思議ですよ。そんな当たり前のことに誰も気づけないなんて」
「気づいている人はいくらでもおるで。これは、社会保障の経済学では当たり前の話やし、年金制度を作る厚生労働省も同じ意見や。年金の問題を解決するには、お金を貯めてもしょうがない。少子化を食い止めたり、1人当たりの生産力を増やしたりしないとあかん」
『きみのお金は誰のため』112ページより
少子化が進むと働く人の割合が減る。働く人の割合が減れば、当然、提供される物やサービスの総量も減る。どんなにお金を貯めていても、必要としている人全員に行き渡ることはない。結果、物価が上昇するので、「老後の必要資金」は増えることになる。
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