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「モノ言う株主」米名門百貨店の破綻招いた大誤算 長期的な目線で「企業価値の向上」を目指すべき

東洋経済オンライン / 2024年6月3日 15時0分

ビル・アックマンとロン・ジョンソンが行なおうとした改革は、結果として裏目となり、長期的な企業価値を大きく棄損する結果となってしまった。

ビル・アックマンは失敗を認め、2013年8月に投資を引き揚げている。以下のグラフは、2010年以降のJ.C. Pennyの株価であるが、2014年には2010年の半分未満の株価になっており、いかに多くの価値が数年で失われてしまったかが理解できよう。

■J.C. Pennyの株価の推移

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

なお、J.C. Pennyは2020年5月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻した。現在は再建中であるが、店舗数は600~700ほどに縮小している。

このようにアクティビスト投資家がポジティブに働くか、ネガティブに働くかは、ケースバイケースであり、一概に答えを出すことはできない。しかし、アクティビスト投資家が、長期的な目線で企業価値の向上を目的としているかを判断するうえで、1つ基準となる考え方がある。

取り分を増やすのか? パイ自体を大きくするのか?

それは、アクティビスト投資家が「パイから自分への分配を増やそうとしているか?」それとも「パイそれ自体を大きくしようとしているか?」である。前者を「パイ分配」とし、後者を「パイ成長」とすると、そのイメージは以下の図のようになる。

■アクティビストの2つのイメージ

ここでいう「パイ」とは、会社が分配できるお金の全体額と考えていただきたい。

会社はパイの中から、どのくらいの割合を成長投資に回そうか、役員や従業員に回そうか、負債を返済しようか、株主に還元しようか、といった意思決定を行なう。すなわち、決まった大きさのパイからその分配を決定する。

このパイの大きさは短期的には一定であるが、長期的に見ればパイ自体を大きくすることはできる。

たとえば、成長投資を継続すればビジネスが成長し、将来的には会社が分配できるお金の全体額、すなわちパイが大きくなる。

長期的な企業価値を向上させる「パイ成長」

アクティビスト投資家の要求するアクションが「パイ成長」を目的としたものである場合には、それが長期的な企業価値の向上につながる可能性が高いものと考えられる。

一方、投資家が得られる「パイ分配」を上げることが目的である場合には、それが長期的な企業価値の棄損につながる可能性が高い。

たとえば、従業員を解雇したり賃金を節約したりする一方、株主還元を厚くする場合、それは従業員へのパイの分配を減らし、株主へのパイの分配を増やしただけである。

また、会社が抱えるノンコア資産を売却し、その売却資金を成長投資に回すのではなく単純に株主へ分配する場合、これも会社が元々抱えるパイを一時的に株主へ分配しただけであり、パイ自体を大きくするアクションではないといえる。

アクティビスト投資家は、一般的に、長期的な企業価値の向上を目的と掲げ、短期的なリターンを目的としていることは(本当はそれが目的であったとしても)言わない。

投資を受けた会社は、アクティビスト投資家の本当の目的をよく吟味する必要があろう。

森 憲治:公認会計士、米国証券アナリスト

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