「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差
東洋経済オンライン / 2024年6月3日 7時20分
2023年12月に新たに家電事業のトップに就任した堂埜茂氏は、収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。
「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける。
大手から新興まで厳しい事業環境に苦しめられる中、気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。
2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。
同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。
その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない。
IoT先駆者がこだわったこと
同社は2001年から湯沸かしポットを利用すると家族の携帯電話に通知が飛ぶ「みまもりポット」を展開するなど、通信機能を搭載した家電の開発では隠れた先駆者だ。
それでもあえて通信機能を入れなかったのは「おいしいご飯を炊くという本質のためには、優先順位が低い機能」(堀本氏)だったから。炎舞炊きではネットにつながる代わりに、ご飯を炊くたびに炊き上がりを評価するボタンが表示され、炊飯器が利用者の好みを学習していく。
デザイン性にも気を配る。「かつては台所と居間が別の住宅が多かったが、リビング・ダイニング・キッチンが1つの空間という住宅が増え、家電製品がつねに目につく場所に置かれるようになった」(堀本氏)からだ。
2022年には17年ぶりにオーブンレンジの新製品を発売するなど、つまずく大手や新興を尻目に今後もさらに攻勢を強める構えだ。
人口減少によって国内家電市場が緩やかに縮小していく中、家電メーカー各社の戦略は二分されつつある。
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