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薬物依存症者の「逮捕実名報道」家族が抱く違和感 過剰な報道が依存症者の社会復帰を阻むと懸念

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 10時0分

名前は「デジタルタトゥー」として半永久的にネット上に残る。実名を報じられた人の中には20代の若者もいるが、罪を償った後も就職や結婚が困難になったり、物件を借りるときや住宅ローンを組むときに支障が生じたりと、さまざまなハンディを背負うことになる。

「前科のある人の再起が難しい日本社会において、薬物使用者を一律に実名報道するのは、本人の更生と社会復帰を妨げるだけです。社会から排除されるつらさから逃れるため、再使用に走るリスクも高まります」と、加藤代表は強調した。

ダルクの窮地は本人や家族にも打撃

NPO法人「全国薬物依存症者家族会連合会(やっかれん)」や依存症当事者・家族の支援を担うNPO法人ASK、ギャンブル依存症問題を考える会などは5月12日、連名で声明を発表。「依存症者がダルクで回復の道を歩んでいることで、家族がどれだけ救われるかわかってほしい」などと訴えた。

ダルクは全国に80カ所以上存在するが、中には地域住民の反対運動などが起きている施設もある。声明は、地域の反発が強まることなどへの懸念を示し、実名報道に関しても「依存症者の将来をつぶすだけで何の役にも立ちません」と非難した。

やっかれんの横川江美子理事長は、回復施設や薬物依存症者に対する社会のスティグマ(差別や偏見)が強化されてしまうのではないか、と話す。

「人間は知らないもの、わからないものに恐怖を感じます。逮捕の事実だけが報じられることで、薬物使用者はこれまで以上に得体のしれない存在として警戒され、社会の中で回復するのが難しくなってしまいかねません」

薬物依存者への対応として、閉鎖病棟や矯正施設で一定期間、当事者を薬物から引き離すことも行われている。しかし物理的に薬物をシャットアウトするだけでは、回復して社会復帰することはできず、自らの意思で「やめ続ける」ことが必要だ。ダルクは本人の意思を尊重しつつスタッフが生活に必要なサポートを行い、回復に必要なプログラムも提供できる非常に重要な施設だと、横川理事長は強調する。

一度薬物から離れた人は「使う前」と同じ状態に戻るのではなく、「使わずにいられた」日を一日一日積み重ねて生きていかなければならない。それは社会の人が思う以上につらいことであり、ダルクのような仲間のいる場で、ともにやめ続けることが不可欠なのだという。

逮捕された3人は弁護士を通じて、木津川ダルクの加藤代表に「罪を償ったらダルクへ戻り、やり直したい」と伝えている。横川理事長の長男もダルクに入寮し、15年以上薬物から離れて生きてきたが、それでもさまざまな事情で施設から離れると、励まし合える仲間がいなくなり再使用のリスクに脅かされるそうだ。

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