富士フイルムの意外な"稼ぎ頭"と成長事業の中身 伸び盛りの半導体材料は「マルチ戦略」で勝負
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 7時50分
事業転換の成功例として知られる富士フイルム。かつては写真フィルムの製造販売を中心としていたが、デジタルカメラの普及とともに写真フィルム市場はほぼ消滅。現在は医療機器、半導体材料、印刷機、写真フィルムの技術を生かしたインスタントカメラ「チェキ」など複数の事業がバランスよく収益貢献している。
売上高・営業利益ともに過去最高となった2024年3月期のセグメント別売上高構成比をグラフにした(下図)。
2兆9609億円の全社売上高のうち、4割を占めるのが事務機や商業・産業印刷機などの印刷機を手がけるビジネスイノベーション。3割が医療機器などのヘルスケア。そしてカメラを中心とするイメージング、半導体材料や液晶向けフィルムなどのエレクトロニクス、という構成だ。
「チェキ」の収益性は断トツ
全社で2767億円の営業利益に目を向けると、イメージングとエレクトロニクスは事業の営業利益率が10%を超える。イメージングは消耗品のチェキ専用フィルムの収益性が高いこともあり、事業利益率は約22%だ。
エレクトロニクスは、半導体向け、液晶向けともに、顧客の在庫調整や稼働率低下の影響を受け需要が軟調だった。しかし半導体材料での買収効果もあり売り上げ成長を維持できた。今年5月末には、キヤノンが手がけるナノインプリント半導体製造装置向けの材料、ナノインプリントレジストの販売を開始した。
ナノインプリント半導体製造装置には、既存の半導体露光と比べて圧倒的に少ない消費電力で微細な回路を描ける強みがある。満を持して、キヤノンが2023年10月に投入したばかりの半導体製造装置だ。(詳細は「キヤノンが10年越しで開発、「究極」の半導体露光」)
とはいえナノインプリントは、まだ市場に浸透するかは見通せない新技術。富士フイルムはナノインプリント半導体製造装置に期待し、従来のフォトレジストと大きく異なる専用材料の販売を決めた。
富士フイルムの提供する半導体材料の中では、約8割の世界シェアを誇るイメージセンサー用カラーフィルター材料が有名だ。現在、日本、台湾で製造をしている。2024年末には韓国でも製造設備が稼働予定だ。
しかし、同社の提供する半導体材料はそれだけではない。半導体の基板材料であるウェハーに回路を描く際に使われるフォトレジスト、研磨剤のCMPスラリー、保護膜の形成などに使われるポリイミドなどラインナップが幅広い。
M&Aで半導体材料を拡大
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