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アメリカとウクライナの足並みがそろわない理由 バイデンの「非満額回答」にゼレンスキーは大不満

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 17時0分

2024年夏に欧州諸国から供与が始まるとみられているアメリカ製戦闘機F16によるロシア領内への攻撃も認められなかった。

今回の部分容認を受けた実際のロシアの国境州への攻撃は、早ければ2024年6月中にも実行されるとみられる。注目はその際、ロシア軍がどのような反応を見せるかだ。

侵攻がもはや「米欧とロシアとの戦争だ」との認識を示すプーチン大統領としては、自国領内がアメリカ製高機動ロケット砲システム「HIMARS」(ハイマース)などで攻撃されて損害を受けた場合、国内の保守派世論から批判を受ける事態も否定できない。

国防相をショイグ氏からベロウソフ氏に替えた直後でもあり、アメリカに対し、従来以上に強硬な反応を示す可能性も相当あるだろう。

今回の部分的攻撃容認決定に不満なウクライナだが、ここへきてアメリカとの関係がいっそうギスギスした様子が目立つ。これを象徴する事態が2024年5月に起きた。

筆者は、2024年5月14日付「『覇気のない』演説から見えるプーチンの焦り」の中で、ウクライナ軍が兵力温存を優先した防御作戦を続ける一方で、2024年6月から8月にかけて、反攻作戦を始める準備をしていると書いた。

アメリカから「反抗延期」も

しかしキーウの軍事筋によると、その後ウクライナ側はアメリカ軍から反攻作戦開始を2024年内でなく2025年に先送りするよう提案を受けたという。これに軍事筋は反対を示す。

「この夏に軍事的成果と7月のNATO(北大西洋条約軍機構)首脳会議での外交的成果の両方を挙げてこそ、ウクライナは秋以降、ロシアに対して優位に立てる」と述べて、アメリカ側の反攻延期提案を批判する。

同筋は今回の部分的攻撃容認にも批判的だ。「アメリカ製兵器をここは使ってよいとか、ここはダメだとか理屈では線が引けても、実際の戦場では無理だ。戦争は生き物だ。そんな簡単に分けられるものではない。バイデン政権は理論優先過ぎる」という。

「部分的容認論」と「反攻延期論」という2つの動きを見てきたが、そこには通底しているものがある。バイデン政権は、目の前の事態に対処するための戦術的理論は打ち出すが、結局この侵攻をどう終わらせたいのか、という戦略的大目標がないということだ。

ウクライナの場合、その戦略的大目標は明確だ。戦場でロシアに勝ち、それによってロシアを占領地から追い出し、和平交渉に優位な立場で臨むことだ。すべての戦術はこの大戦略実現のために組み立てられる。

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