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別れた夫の悪口を子どもに言わなかった母の思い 2人の「ひとり親の子育て」を通じて感じたこと

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 15時0分

父親の頭をなでながら、

「父ちゃん、悪いことしてへんか!?」

と冗談まじりに尋ねたら、

「してません! 校長先生、もういい加減、言わんといて。わしほんとに真面目に生きてるから!」

と、真っ赤な顔して、破顔一笑。

その隣で息子は、私の顔をまっすぐ見つめて、「大丈夫、大丈夫」って頷いていました。

お父さんは何度もやり直しをして、変わったんですね。

大人だって、可能性は無限大。人はいくらでも変われる生き物なんです。このお父さんがそのことを、教えてくれました。

お父さんの悪口は言わないで

大空小学校は、子どもが自由になんでも言える場所でした。だから、子どもたちも家のことをたくさん、教員たちに話してくれました。

「お父さん、お母さん、いつもケンカしてる。いつ別れるかわからへんわ」

「毎日ケンカしてるから、俺、黙ってる。家ではなんもしゃべれん。こんなんなら、別れたほうがいいかもしれない。でも、パパかママかどちらかについて行くなんて、究極の選択やろ? そんなん、できんな」

なんて、軽い感じで話す子もいました。

夫婦を何年もやっていたら、ぶつかることもすれ違いも、あるでしょう。腹が立ってケンカをしてもいいけれど、弱者(子ども)を守る視点を、忘れてはいけませんよね。言ってはいけないことがあります。

言ってはいけないこととは、何か? 

その場にいる1人ひとりが、想像しないといけません。それぞれに違うと思いますが、少なくとも、大人への信頼をなくすようなことは言ってはいけないと思います。子どもに「こんな親で不幸だ」「大人になんてなりたくない」なんて思わせてはいけないですから。

1人で3人の子どもを育てることになったお母さんがいました。お父さんは子どもたちの面倒をよくみるとてもいい人でした。読みたい本も買い与え、よく遊び、子どもたちはお父さんのことが大好きでした。

でも、好きな女性ができて、そのお父さんはある日、家を出て行ってしまったのです。

ほかに好きな人ができるのは、人間の感情としてありえます。人間の感情ですから、仕方がないですね。理由はいろいろあるでしょうけれど、今どき離婚なんて、珍しくはないでしょう。

とはいえ、実際に別れるのは、大変です。1人で3人の子育てをすることになったこのお母さんもそうでした。

あなたたちのお父さんは、大切な人

でも、このお母さんが偉かったのは、出て行った父親の悪口を、子どもの前でいっさい言わなかったことです。「あなたたちのお父さんは、とても大切な人だよ」と、言い続けたのですね。

腹の奥底では、ぶちまけたいこともたくさんあったでしょうが、それを子どもの前では封印しました。

子どもたちの健やかな成長を考えたとき、思い出の中であっても大好きな父親が生き続けることを、何より最優先させたのです。

母親も人間です。苦しむし、悩むし、傷つきます。

でも、たとえ本心ではなくても、うそであっても、「あなたたちのお父さんは、とても大切な人」と言ったお母さんは、偉かったと思うのです。

木村 泰子:大空小学校初代校長

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