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金利上昇すると「資産価格が下がる」納得の仕組み 東大名誉教授が経済学的視点で教える投資知識

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 14時0分

2年目の100万円の現在価値
X×1.05=100万円
X=100万円÷1.05=95万2000円

1年目の100万円と2年目の収益の現在価値95万2000円=195万2000円の2つの収益を得られることが、株式資産Aを保有するメリット(=株式の価格)です。2年分の資産収益を現在価値で合計した値がこの資産の価格です。

つまり、購入時点で株式資産Aの価格が195万2000円であれば、株式資産Aを保有することは合理的です。

もし、株式資産Aの価格が200万円だとすれば、200万円の金額で株式資産Aを購入するよりも、100万円は手元に置いといて、残りの100万円を銀行預金したほうが得です。なぜなら、200万円のうち100万円を預金すると、2年目には105万円の収益が得られるからです。もし株式資産Aを保有しても、2年目の収益は100万円にしかなりません。

逆に、株式資産Aの価格が195万2000円以下であれば、銀行預金するよりも株式資産Aを保有するほうが2年目に100万円だけの収益(預金に預けた場合の収益よりも多い)が得られるため得です。そのため、株式資産Aへの購入希望が殺到します。

金利が上がると現在価値が下がる

では、このときの金利水準が10%であれば、どのように考えればよいでしょうか。同じように2年目の100万円を1年目に割り引きます。次のように計算できます。

2年目の収益の現在価値
100万円÷1.1=90万9000円

1年目+2年目の収益の現在価値
100万円+90万9000円=190万9000円

金利が5%のときと比べると、現在価値の合計は195万2000円→190万9000円と下がっているのがわかります。このように金利が上がると資産価値は下がるのが経済学の原理です。

金利と資産価値の関係
・金利が上がると資産価値は下がる
・金利が下がると資産価値は上がる

上記のケースでは、あくまで2年分だけを比較しただけです。

しかしこれが無限に続くと仮定すると、少しの金利変動が大きく資産価格に影響します。金利が上がると資産価格は下がる。将来の収益の「現在価値」を考えるときには、金利で現在価値に「割り引く」という考え方が重要なのです。

株価の先行きを正しく予測する

ここでお伝えした知識を使えば、株価の先行きを正しく予測することができます。

例えば、毎期の株の配当が10万円でそれが無限に続くとします。また金利は1%とします。この場合の株価は10万円÷0.01=1000万円になります。

もし金利が2%に上昇すると株価は10万円÷0.02=500万円となって、半分に下落してしまいます。このように、少しの金利の変化でも株価のような資産価格に大きく影響します。株価の先行きを予想することは難しいのですが、金利の動向をみると、株価がどう動くかが判断できるのです。

なお、基本的には金利が上昇すれば、株価は下落します。ただし、金利の上昇が経済活性化を反映したものであれば、将来の株式配当も増加しますので、株価は下落しないかもしれません。金利がどういう経済状況で変動するのかを理解することで、株価の先行きを正しく予想できるでしょう。

井堀 利宏:東京大学名誉教授

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