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DMMビットコイン「流出482億円」補償の胸算用 自己資本81億円でも「全額補償を即日発表」の背景

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 18時0分

だがコールドウォレットが、ネットから隔離した専用端末で、複数人による管理が徹底されていたのかなど、そもそもの運用体制から検証されるべきだろう。

小田会長も「いいシステムを入れるなど技術水準もそうだが、さらに大事なのは運用体制だ」と述べる。

上昇相場への影響は軽微か

流出額の点では、コインチェック事件に次ぐ金額となったが、その時と異なり暗号資産取引市場に及ぼす影響は軽微というのが大方の見方だ。

総合金融業のSBIホールディングス傘下にある交換所・SBI VCトレードの西山祥史アナリストは、過去との違いとして「市場の厚み」を指摘する。

実際、分析サイトの「CoinGecko」(コインゲッコー)のデータを見ると、暗号資産全体の取引高はコインチェック事件前と比べて大きく増えている。コインチェック事件前、1日の取引高は400億ドル前後だった。それが足元では日によって1000億ドルを超える規模となっている。

また、この先は西山アナリストが考える、過去の価格上昇時にみられた「クリプト3条件」もそろうことで一段高が見込まれる。

主要中央銀行が金融緩和傾向であること、株式市場のボラティリティ指数が低水準であること、実質金利が低下傾向であること――が3条件だ。年後半にはアメリカが利下げへと転換すると予想され、年末頃に条件を満たす可能性がある。

さらに機関投資家マネーの本格流入も年後半にかけて予想される。「伝統的な機関投資家の動きとして、新たな金融商品が出たときには6カ月間の投資実績を見る」(西山氏)。

それを前提にすると、アメリカで1月に承認されたビットコイン現物ETF(上場投資信託)に機関投資家が本格的に資金を投じるのは年後半と予想されるわけだ。

「交換所の事件後」も今回は違う?

流出事件を起こした交換所の「その後」についても、今回は違うのかもしれない。マネックスグループに救済買収されたコインチェックなど、事件を起こした交換所の多くは他社の資本傘下に入った。

その点、DMMビットコインに関してはDMMグループが今後も支えるという意思を示したように取れる。実際、DMMビットコインは、480億円の増資や借り入れによって計550億円をDMMグループから調達することになった。

DMMビットコインの自己資本は今年3月末時点で81億円。自己資本比率規制上、資本として計上できる劣後債務などを加味しても105億円だった。482億円分相当を補償するには、踏み込んだ支援を受けないとできなかった。

そもそもDMMグループがDMMビットコインを売却したいとしても難しいのかもしれない。「追加の補填などの可能性を考えると、DMMビットコインにつけられる値段はよくて10億円、20億円では」(交換所関係者)。それでは手放す動機がない。

DMMビットコインは、補償の具体的な方法や時期を速やかに検討し、今後公表するとしている。

「『ハッキングは起こるもの』と頭のどこかでわかっていても、日常の業務の中で意識が弱くなる。しかしいざ起こると金額が大きく影響は甚大だ」。小田会長はそう語る。交換所の運営に携わる人たちは肝に銘じておいてほしい。

緒方 欽一:東洋経済 記者

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