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くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 19時30分

まず1つ目は経営成績の観点から。現在くら寿司は2024年第1四半期が最新の発表内容となる。そこで見ると、売上高は前期の513億円から561億円に急増。

前期の営業損失から、営業利益も17億円に急増している。

四半期の数字について、「厳しい環境は続いているものの、人流の増加に伴う売上高の増加等により、全般的に好調に転じてきております」「旺盛なインバウンド需要を取り込むべく、今後とも都市部を中心に積極的な店舗展開を図ってまいります」と前向きな言葉を決算短信で述べた。先行投資がかさんでいる北米事業も損失幅がやや縮小した。

経営成績から見ると、この基本給アップは訴求性を向上させるためにも、または業績の結果から見ても、しかるべき施策のように思われる。

次に2つ目の観点から。他の値と比べてみよう。同社の平均年収は約460万円で、これが月に3万円のベースアップと紹介した。まず日本平均の給与所得者の平均は令和4年分で458万円。これに対して、上場企業の給与平均はさまざまな調査があるが640万円ほどを示す結果が多い。

なお、私は年齢を無視しているので、強引な分析・比較であることは承知している。ただ、同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。

つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる。

くら寿司のすごさ

これから飲食店に求められるのは、もちろん商品開発やサービスを追い求めることにある。ただ、冒頭でKura Sushi USAの話をしたように、IT企業の側面がある。私自身、某回転寿司チェーンを取材して感じたが、そこらの企業が想像できないほどDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めており、高度なシステムが稼働し続けている。

考えてみてほしい。あらゆる時間に予約や注文が入り、それを難なくこなして時間通りにオペレーションするのだ。

さらに、IT開発だけではない。外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ。

くら寿司の場合は積極的に出店を続け、さらに海外事業にも力をいれるとしている。ならば、より働く場所としての魅力を高めて、新卒・中途採用に力をいれる必要がある。

定額減税が3月に決まって6月に実施されるというバタバタで、事務処理担当者の鬱憤や不満がたまっている。さらに電気代があがり、さらに夏の猛暑で野菜等の値上がりが予想されている。名目賃金は上がっても、実質賃金はまだマイナスを続けている。そんなときに、くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。

そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった。

それにしても——と私は感じるのだ。

くら寿司が狙った、とは思わないが、このタイミングでの発表はかなりの宣伝効果があっただろうし、人材を集める際にプラスの効果があるだろう。さすがに6億円ぶんの効果があった、とまではいわないが、金銭で計算した際のPR効果はかなりのものだろう。

くら寿司のベースアップは、その宣伝効果も含めて、企業行動に示唆を与える。

くら寿司の最近の店の様子

坂口 孝則:未来調達研究所

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