トヨタ、ホンダでも発覚、止まらぬ認証不正の連鎖 ルール破りは論外だが制度の見直しは必要
東洋経済オンライン / 2024年6月7日 7時20分
「『ブルータス、おまえもか』という気持ちだ」
6月3日、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社は新車の認証試験で不正が確認されたと発表した。
日本の自動車業界では2010年代半ばに燃費不正が発覚、同年代後半には完成車検査の不正問題も起きた。そうした中、これまで不正と無縁だったトヨタとホンダも例外ではなかった。
そもそも今回、各社で不正が発覚したのは、日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機などトヨタグループでの連続不正がきっかけだ。国土交通省が1月に内部調査を命じていた。
トヨタでは計7車種で、歩行者保護試験における虚偽のデータ提出や衝突試験における試験車両の不正加工など安全性に直結する項目での不正が確認された。
グループのコンプライアンス体制の立て直し策を発表した1月30日の説明会で、トヨタの豊田章男会長は「私が知る限り、これ以上は(不正は)ない」と話していた。それだけに3日の会見で、トヨタでの不正を知ったときの気持ちを問われて語った冒頭の言葉には実感がこもっていた。
順法性の観点が欠けていた
「起こりえない体制ができていると思っていたが、順法性の観点が欠けていた」。そう口にしたのはホンダの三部敏宏社長だ。
ホンダでは、開発と認証の部門を分けることで組織での牽制機能が働く仕組みを導入しており、認証不正は“起きないはず”だった。だが、最長15年分のデータを調査したところ不正が発覚。騒音試験や原動機車載出力試験で、試験成績書への虚偽の数値記載や、試験条件の逸脱があったという。対象車種は販売した22車種325万台に及ぶ。
マツダでは計5車種で、出力試験におけるエンジン制御ソフトの書き換えや衝突試験における試験車両の不正加工が判明。スズキでは1車種で制動装置試験の虚偽記載が、ヤマ発では2輪の不正行為があった。
認証試験は、自動車の量産に必要な「型式指定」を取得する前提となるもの。各社は自社で再試験した結果、乗り続けても安全性に問題はないとしているものの、トヨタは「ヤリスクロス」など3車種、マツダは「MAZDA2」など2車種の生産を停止した。また、トヨタは全ての調査をまだ完了していないという。
現場の負担、認証制度の軽視
会見を開いたトヨタ、ホンダ、マツダの説明から見えてきたのは現場の負担増や認証制度の軽視だ。
トヨタの豊田会長は「原因は1つではない」としたうえで、「最終試験で問題が発覚しても短い納期でやり直す。そこで負担が発生したのでは」と認証部門へのシワ寄せが発生していたとの見方を示す。カスタマーファースト推進本部・宮本眞志本部長は「認証という意識が少し薄かったというのは否めない」と話す。
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