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声のため去勢まで…歌手たちの知られざる悲劇 「オペラ大図鑑」でたどるオペラの壮大な歴史

東洋経済オンライン / 2024年6月11日 15時30分

(画像:『オペラ大図鑑』より)

オペラを鑑賞したことはあるでしょうか?

魂に触れるオーケストラの音楽と歌手の肉声、人間の感情をあますところなく表現する物語、演出、工夫を凝らした舞台装置と衣装。

”総合芸術”であるオペラは、舞台芸術の愛好家だけでなく、すべての芸術ファン、そして大人の教養でもあるといえるでしょう。

大型書籍『オペラ大図鑑』は、オペラの誕生から現代作品にいたるまで400年以上の壮大な歴史を、美しい多くのカラー写真とともに、イタリア、ドイツ、フランス、ロシア、チェコなど国ごとに、年代順で、182作品をも詳説した贅沢なヴィジュアルブックです。

日本では、東京・初台の新国立劇場にオペラパレスがあり、そこでは大野和士芸術監督の下で最高水準の公演が制作されています。今年は「椿姫」「コジ・ファン・トゥッテ」「トスカ」などが上演。海外からの招聘公演も戻ってきました。

この素晴らしい“総合芸術”オペラについて、鑑賞前の手引きとしても、その魅力をより深く味わうためにも、本文の一部を抜粋して紹介します。

オペラ界のアイドルたち

オペラとディーヴァ崇拝は切っても切れない関係にある。何世紀にもわたって、類いまれな声と強烈な個性を備えたごく少数の歌手によって、オペラのあらゆる情熱やドラマが具現化されてきた。そして、オペラファンはいつもそうした歌手たちに興奮し、称賛し、熱狂してきた。舞台の上でも、舞台以外でも、オペラ界のアイドルたちは緊張に満ちたドラマへの愛とともに、オペラという芸術形式全体を活性化してきたのだ。

伝説的なオペラ・スターといえば、ほとんどがディーヴァ(イタリア語で女神)と呼ばれるソプラノ歌手だが、テノール歌手、オペラ創成期にはカストラートだったこともある。誰もがオペラの神秘的な魅力を人々の記憶に長く留めるうえで中心的な役割を果たしてきた。そこにはどんな秘密があるのだろうか?

並外れた高音はほぼ必須の条件で、ソプラノやテノールが美しく長く持続させて歌うハイCは、聴衆に衝撃的な感動を与える。トップに君臨するオペラ歌手たちは役者でもあり、説得力ある歌唱によって役に命を与える。しかし、同じくらい重要なのは、華やかで気まぐれな個性だ。多くのディーヴァが最高のオペラ作曲家や指揮者のミューズになることに不思議はない。

とはいえ、ディーヴァ中毒が蔓延するのはオペラ愛好家のあいだでのこと。彼らはお気に入りの歌手を追って世界中に出かけ、カーテンコールでは花束を投げ、恋人やペット、髪型や何を食べているかなど、私生活の些細な情報も集めている。トップに君臨するディーヴァ・アッソールタ(絶対的ディーヴァ)ともなると、さらなる異名をも持つ。20世紀のギリシア系アメリカ人ソプラノ歌手マリア・カラスは「ラ・ディヴィーナ」(神聖なるもの)、ライバルのレナータ・テバルディは「ラ・レジーナ」(女王)と呼ばれた。

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