日本が今の円安を懸念する必要はまったくない 日銀の植田総裁が利上げを急ぐ可能性は低い
東洋経済オンライン / 2024年6月11日 8時30分
日経平均株価は、3月22日に史上最高値を一挙に更新、終値で4万0888円をつけた。その後は4月中下旬までの調整を経て、3万8000円~3万9000円台を中心としたレンジ(範囲)で方向感を欠いた推移となっている。
一方の米国株は、6月に入ってもS&P500種指数が最高値を更新するなど好調だ。他の主要市場と比較しても、最近の日本株の値動きはやや鈍いようにみえる。
「日銀は円安の行きすぎに対応する」は本当か?
だが、TOPIX(東証株価指数)となると話は別だ。同指数のパフォーマンスは円安の追い風もあり、米国株(S&500種指数)を依然として上回っている(6月7日時点)。
また、TOPIXは7日現在で2755ポイントと、3月22日につけた今年の高値2813ポイントに再度接近しており、日経平均株価の値動きとはやや異なっている。これは日経平均株価の上昇ペースが3月までかなり急速だった分、その反動があらわれたということだろう。日本株の4月以降の相対的な弱さの多くがこれで説明できる。
一方で、5月後半には日本の長期金利が1%の大台を超えて上昇するなど、金利上昇が5月以降の日本株市場で嫌気されているとの見方がある。
確かに日本銀行は、3月にイールドカーブコントロール(YCC)を含めた「異次元の政策手段」をとりやめる政策転換に踏み出した。市場では、その後も円安基調が続く中で、日銀が「円安の行きすぎ」に配慮して、追加利上げや保有国債残高を減らすなどの政策対応を前倒しするとの見方がくすぶっている。
この思惑の前提には、「円安の行きすぎには日銀が対応するはずだ」という考えがあると筆者はみる。支持率低下に直面している岸田政権が、経済メディアなどで論者が批判する「円安・物価高」に神経質になっており、「政治への配慮」から日銀が引き締め政策を前倒しするのでは、との思惑が働いている。5月7日に岸田文雄首相と植田和男日銀総裁が為替動向などについて議論したことも、こうした疑念を強めているようだ。
ただ、そもそも、為替変動に直面して、金融政策の判断が大きく左右されるのは妥当とは言い難い。過去を振り返ると、1985年のプラザ合意後の円高、1998年半ばまでの日本の銀行問題への懸念を背景とした円安など、為替市場が大きく動く場面は複数回あった。
だが、これらの為替変動に対して、当局による金融政策や為替介入が成功したとは言えない。というのも、変動相場制のもとで為替レートをターゲットにして強引に制御しようとして対応しても、機能しないからである。
植田総裁が円安容認姿勢を変える可能性は低い
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