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あまりに面倒な「定額減税」、マシな方法はあった 解散総選挙に向けた人気取りの思惑も外れた

東洋経済オンライン / 2024年6月11日 8時0分

6月は、定額減税を実施するのに最適なタイミングだったかというと、所得税制からみて、そうとは言えない。12月の給与に対する年末調整を行うときが、手間を可能な限り少なくできるタイミングである。

もちろん、定額減税を受ける人のすべてが給与所得者ではない。ただ、大半の人は給与所得者である。給与所得者に定額減税を実施するなら、各事業者の手間が比較的かからない12月に実施すればよかった。それを、あえて6月に実施したわけだから、実施を急いだといわざるをえない。

事業者の減税事務をより軽くする方法で減税する方法もあった。それは、定率減税である。

所得税や個人住民税の納税を一定率軽減する形で実施する定率減税は、定額減税のように、減税分を反映しきれずに(税引き後の)給与を支給するということは起こりえない。毎月定率で減税すれば、減税事務は終わる。減税しきれなかった人に給付を出すという必要もない。

しかし、定率減税の最大の欠点は、低所得者ほど減税額が少なく、高所得者ほど減税額が大きくなることである。所得格差是正には貢献しない。

今から思うと、そうしたことも考慮されて、今般の定額減税が企画されたわけだが、もっといい方法はなかったのか、といいたくなる顛末である。1人当たり4万円の定額減税が実施されれば、手取りの所得が増えて嬉しいという話になるかと思いきや、そうした雰囲気ではないのが実態だろう。

もし「給付付き税額控除」があったなら

もし、わが国に「給付付き税額控除」という仕組みが導入されていれば、定額減税も給付も一貫性を持って実施でき、減税事務や給付事務でこれほど煩わされることはなかっただろう。しかし、わが国の租税法の考え方などから、給付付き税額控除は、一部の政治家や経済学者は唱えるものの、実務的に一顧だにされていない。

2024年の春闘での賃上げ、その直後の定額減税で、好感が持たれ、衆議院の解散・総選挙に打って出られると期待したのだろうか。強いてこの時期に定額減税を実施する決断をした。

しかし、政治資金規正法改正論議が話題を席巻し、多くの人が定額減税のありがたみを感じられない状況である。衆議院の解散・総選挙どころではなくなっている。

こんな大変な思いをしてまで定額減税を実施するなら、二度としてほしくない、という印象を持つ人が多ければ、この定額減税は今年だけで2025年には実施しない、ということになるのだろうか。

土居 丈朗:慶應義塾大学 経済学部教授

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