年商1億円も「閉店発表」ラーメン店に起きた奇跡 拡大の中で感じた虚しさと、再出発で掴んだ幸せ
東洋経済オンライン / 2024年6月12日 12時0分
今までの桐谷さんが自ら仕込みをするやり方とは別で、セントラルキッチンで味づくりをし、麺も製麺所で作れる方法を模索した。桐谷さんが横山製粉と共に開発した「スーパー桐麺粉」を使い、特殊な製法で麺を打ってもらった。
「今までは一から十まで自分で作ることにこだわり続けてきましたが、『桐麺』を食べたい人が本当に多く、喜んでくれる人がいるならば、体制を整えてしっかり『桐麺』の味を存続させ、大阪のお店は残すべきだと考えたんです。月一で味のチェック、麺のチェックを欠かさずやっているので、良いクオリティで出せていると思います」(桐谷さん)
「どうせFC(フランチャイズ)だろう」と敬遠する人もいたが、実際食べてみると美味しいとどんどん話題になっていった。今では昔からの常連客も変わらず来てくれるようになっている。
桐谷さんには7人の子供がいる。大阪時代は忙しすぎてまったく育児はできなかった。加西市に引っ越して、初めて末っ子の卒園式に参加することができたという。
「田舎で奥さんと二人でラーメン屋をやりたいと考え出したのは3年ぐらい前からでした。経営者ではなく、あくまで生涯ラーメン職人でいたいと思っていたんです。
場所を探している中、初めて加西に来た時にこの場所に一目惚れしました。たまたま空いていた田んぼが売りに出ていて、即買いしたんです。何より加西の空の青さに惚れたんですよね」(桐谷さん)
こうして2023年10月20日、「Ramen Dream 桐麺」はオープンした。しかし、オープンした時のその景色は、「夫婦二人でゆっくりラーメン屋をやりたい」という桐谷さんが思い描いていたイメージとはまったく違うものだった。
初日から大盛況だったが、近所からは苦情もあった
ある程度お客さんが来ることを見越して、初日から記名制にしていたものの、14時で営業終了の予定が18時半までお客さんが途切れなかった。なんと初日からラーメンが200杯も出たのである。加西市という場所を考えたらあり得ない数字である。
常連客がお祝いを持ってきてくれ、加えて各地からファンが集まった。駐車場が7台しかなかったこともあり、路上駐車が増え近所からは苦情の嵐だった。その後、一日50組限定にしたが、それでも16時までお客さんが途切れない状態だった。
「始めの1カ月は本当に大変でした。路上駐車の嵐で近所迷惑になり『よそ者が来るところじゃねえ』と罵られました。一方で『桐麺』ってこんなに有名なんだ、こんなに愛されているんだということに改めて気づいたんです」(桐谷さん)
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