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撤退観測も飛ぶ「みんなの銀行」は浮上できるか 若年層傾倒が裏目に、タイムリミット残り4年

東洋経済オンライン / 2024年6月12日 7時40分

日本初の「デジタルバンク」が3期連続で最終赤字に沈んでいる(記者撮影)

ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下のデジタルバンク「みんなの銀行」が正念場を迎えている。2024年3月期決算は93億円の最終赤字を計上し、開業からの累積損失は約260億円にのぼる。5月末の投資家向け説明会では、FFGの五島久社長が撤退の可能性に言及。直後に火消しに回る場面もあった。

100億円規模の赤字が続くみんなの銀行の業績推移

みんなの銀行は、既存の銀行が取り込めていなかった「30代以下の若者」に照準を定めた。だが、その戦略には開業当初から誤算が生じていた。FFGは「2027年度の黒字化」を目標に掲げるが、その道筋は必ずしも見通せない。存続に向けて正念場を迎えている。

「3年で黒字化」のはずが

「当初は『3年で黒字化』と発表していた。ただ、すべてがゼロからのスタートで、思惑と違うことの連続だった」。みんなの銀行の永吉健一頭取は吐露する。

同行が開業したのは2021年5月。国内初のデジタルバンクと銘打ち、ほかの銀行とは一線を画したビジネスを志向した。事業は2本柱で、1つは銀行としての預金や決済、カードローンだ。スマホで完結する取引を武器に、30代以下のデジタルネイティブ世代に訴求する。もう1つは、API連携を通じて銀行機能を事業会社に提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)やシステムの外販だ。

開業当時の計画では、2年目までは年間50億円程度の赤字が先行するものの、3年目の2023年度に単年度黒字化を果たすと掲げた。FFGにとっても収益源となるだけでなく、取り込めていなかった若年層や九州域外の顧客にも接触できるチャネルとして期待を寄せていた。

ところが、右肩上がりの収益計画はほどなくして歯車が狂い始める。初年度の赤字こそ想定通りだったが、2022年度以降も赤字額が拡大。2023年度に至っては、黒字化はおろか93億円もの赤字に沈んだ。資本はみるみる溶け、5月にはFFGが90億円の増資を行うと発表した。

計画未達の主因は、稼ぎ頭と期待していたカードローンの伸び悩みだ。2024年3月末の残高は118億円と、開業当初に見込んでいた800億円に遠く及ばない。アダとなったのは、30代以下が7割を占める特徴的な顧客層だった。

カードローンの審査にあたって、みんなの銀行は40代以上が7割を占める既存銀行と同じモデルを流用していた。その結果、モデルが想定する債務者とみんなの銀行の利用者属性にズレが生じた。若年層は与信枠が小さく、1件当たりの実行額は約25万円と計画値の半分強にとどまった。デフォルトも頻発し、不良債権比率は6~7%と想定の2倍に膨らんだ。

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