日本で「夫婦別姓は他人事」と考える人の大問題 「虎に翼」が問う法律とは誰のものなのか
東洋経済オンライン / 2024年6月12日 11時0分
朝の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)は、放送ごとにSNSなどで語り合う人たちが多い人気ドラマである。それは、一見正しいが違和感のある言葉に対し、「はて?」と首を傾げ、現代の女性たちも胸がすくような反論を述べる猪爪寅子(結婚後は佐田寅子、伊藤沙莉)という主役の力も大きい。
日本における30年来の「課題」
このドラマは、寅子の人生を通して、いかに法律が私たちの暮らしを規定しているかを教えてくれる。本作を見るまで、戦前の女性が結婚すると法的に無能力者となり、仕事をするかどうかも夫の許可が必要で、稼いだお金も夫の所有になっていたことを、知らなかった人は多いのではないだろうか。
戦後はイエ制度がなくなり、女性も人権を保障され、民主的で世界に誇るべき日本国憲法ができた。しかし、今も裁判でしばしば、他の法律が、憲法違反かどうかが争われる。日本人は政治に無関心と言われがちだが、私たちが法律や法律を定める政治に関心が低いために奪われている暮らしや権利はないのだろうか。
『虎に翼』を通じてこの問題を考えたいのは、長年の政治課題である選択的夫婦別姓制度について、経団連が1月と3月、政府に導入を要望し、6月10日に改めて「一刻も早く」と国会での審議を求める提言を公表したことが、大きな注目を集めているからである。
選択的夫婦別姓制度は、1996年に法制審議会が民法改正案を法相に答申したにも関わらず、30年間も、国会での議論が棚上げされてきた。2015年と2021年に最高裁まで争われた裁判でも、「現行の夫婦同姓強制制度は違憲ではない」とされている。
2010年代後半から続く第4次フェミニズム・ムーブメントの後押しもあり、別姓論議が盛り上がっている。しかし、その議論が自分とは関係ない、と見過ごしている人や、注目すらしない人も多いのではないか。
日本は、政治家や企業のトップが少なすぎるなど、先進国でまれに見る女性の地位が低い国だ。世界経済フォーラム(WEF)によると、日本の2023年のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と、改善どころか前年から9ランクもダウンしている。差別の解消が進まないのは、政府と経済界が保守的だからと言われてきた。
しかし、その一方を代表する経団連すら選択的夫婦別姓制度を切実に求め始めたのは、既婚者が通称として旧姓を使用し働くことが、仕事の障害になるからだ。
国を超えた商業活動が活発になった結果、旧態依然とした制度が邪魔になっているのだ。提案を却下してきた政府も、いよいよ重過ぎる腰を上げるかどうか。
法律を理解するのにドラマが果たす役割
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