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若者に教えたい「資産形成より大事な金融の本質」 田内学×白川尚史「異色の受賞小説家」対談前編

東洋経済オンライン / 2024年6月13日 9時0分

スキーにしても、生まれて初めて板をはいた人が、いきなりジャンプ台から滑り降りたりはしません。もちろん、100万人に1人くらいの確率で、いきなりすごく飛べちゃう人もいるかもしれませんが、多くの人は少しずつ練習して、段階的に難しいコースに挑むでしょう。

投資においても、リスクを正しく捉えることはとても重要です。

まず”雪に慣れること”が重要

田内:なるほど。

白川:いまは「利益が1000万円を突破しました」というような自慢話を知り合いから聞いたり、ネットで見たり、「日経平均、史上最高値更新!」といったニュースに触発されたりして、「自分もやってみたい」という気になった人も少なくないのではないかと想像します。

ですが、仮に最初はうまくいっても、それが長続きするとは限りません。とくに、情報の不足や、ニュースに踊らされて、自分が取れる以上のリスクを取ってしまうことは避けるべきです。

スキーやスノボでは、まず雪に慣れることが重要です。そのためには、スキー場に行く回数を増やすことが重要なのは自明でしょう。投資についても、正しくリスクを把握するために、まずは投資という行為への接触量を増やすことが大切なのではないでしょうか。

投資に関しては、「選択的注意」の問題もあります。洪水のように情報が溢れる今日において、自分が何を気にして生きているかによって耳に入ってくる情報が変わってくるので、長く投資に触れれば触れるほど、いろいろな情報が手に入るわけです。

そういう人が増えるような教育に、学校での金融教育もなってほしいなとは思っています。

田内:先日、美大の学生さんたちの話を聞いて、少し考えさせられました。

彼らが作品を作るのには、結構なお金がかかるらしいのです。そして、そのお金を貯めるためにはバイトをしなくてはいけないので、絵を描くことに集中できないという、なんとも本末転倒な事態になってしまっているという話だったのです。

そんな彼らに資産形成を教えるのは、「バイトで貯めたお金を投資で増やすにはどうしたらいいか」「増やせたら夢が早く実現できる」という短絡的なマインドを助長するだけなのではないかと心配になりました。

彼らに教えてあげるべきことは、自分が「投資される側」になることではないでしょうか。

例えば、クラウドファンディングで「自分はこういうことをやりたいと思っているから、お金を出してください」とか。日本ではまだクリエーターが投資を受ける例はあまりないかもしれないけれど、働いて貯めたお金を投資で増やすのではなく、必要なお金は初めから投資してもらったり、借りたりしたらいい。

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