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世界では「近視は病気だ」と認識されつつある 日本で目が悪いことが軽視されすぎている理由

東洋経済オンライン / 2024年6月14日 8時30分

ただ私は、近視は病気であるという立場をとります。鼻の高さや背の高さは、「何cmだったら正しい」というような、絶対的な正常値というものはありません。しかし目は、少なくとも近視でも遠視でもない「正視(せいし)」という正常な状態があります。このことから、単なる個人差では片付けられないと考えるからです。

たしかに、軽い近視はそこまで害はありません。ただ、近視というものは、将来どこまで進行するかわかりません。そうであるかぎり、どんな軽い近視でも進行抑制、つまり近視の治療に努めるべきでしょう。

症状が軽くても、治療するということは、病気であるということです。

そしてこれは最も大事なことですが、近視は、将来的に失明に至る可能性のある病気を引き起こすリスクを増やすことがわかっています。このことからも、近視は病気であるといえるのです。

具体的に言うと、程度の差はあるものの、近視の人は将来、緑内障、白内障、網膜剥離、近視性黄斑症といった病気にかかるリスクがはね上がります。こうした眼疾患はすべて、将来的に失明につながるリスクのある病気ということで共通しています。

たとえば、日本人の失明の原因の第1位である緑内障はどうでしょう。

目の中には、網膜から脳に通じる神経がありますが、それが一つひとつ死んでいってしまう病気で、目の圧力(眼圧)が高まることで血液の循環障害が起きたり、細胞が圧迫死したりしてしまうのが主な原因です。

近視の目はもろい状態にある

ところが、近視の人の眼球は伸び、網膜も伸びて薄くなっています。つまり、普通の人より、眼圧に対してもろい状態になっています。血流も悪くなっています。こうしたことが、神経が死ぬリスクを高めるといわれているのです。

さらに言うと、近視の人は緑内障の早期発見にも支障が出ることがあります。目の奥には視神経乳頭という部分があり、緑内障になるとこの凹みが大きくなるので、正視の人なら検査すればすぐ「おかしい」と気付けます。

ところが近視が強くなると、視神経乳頭の形状が変化してしまうことがあるのです。そうすると、緑内障が作った凹みが見つけづらくなり、結果的に診断が遅れてしまう可能性があるのです。

近視が病気であると聞いて、何か怖いだとか、ネガティブに受け止められる方も少なくないかもしれません。ただ、病気として注意喚起されるからこそ、近視のことをより理解しようとか、子どもが近視にならないようにしようとする人が増えることが期待できる側面もあります。

また、病気と認識され始めたことで、世界ではさまざまな研究者が新しい治療法を開発しようとしています。大切なのは、現実を直視することです。私は、近視は病気であるというスタンスです。

窪田 良:医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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