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発達障害者も「スーパー総務」と重用する零細企業 「新・ダイバーシティ経営」選出社長の採用方針

東洋経済オンライン / 2024年6月15日 9時0分

「障害の有無は関係なく、ウチに合うかを考えた結果です。彼女は高校でパソコン部に所属し、就職を見据えてワードやエクセルの資格を取得しています。目標へ向かって努力する姿勢を感じられました」

5人雇用は必要な人材として選んだ結果

入社当初の佐々木さんは、コミュニケーション面で同僚とうまくいかないこともあったという。そこで川田社長は現場のリーダー格の社員を中心に勉強会を何度か開いた。札幌市がウェブ上で公開している資料「発達障がいのある人たちへの支援ポイント『虎の巻シリーズ』」を用いて特性を学んだ。

佐々木さんからも要望を聞いたうえで、周囲が具体的な指示を出すように心がけると、本人もそれに応えて懸命に働いた。成果が上がるようになると、徐々に信頼関係が醸成されていく。その過程で業務の内容を明確化したことで、無駄が減って効率化が進む効果も得られた。

資金力が乏しい中小企業には、余計な人員を雇う余裕がない。そんな中、川田製作所では、佐々木さんを含めて計5人の障害者が働く。区分も精神や知的、身体障害とさまざまだ。

従業員の少なさから法的な義務は負わないものの、雇用率は法定の2.5%を大幅に超過。もちろん、1人ひとりが主力として活躍している。川田社長は「積極的に障害者を受け入れているという意識はない。会社に必要な人材を採用していたら、結果的にこうなった」と説明する。

一方、障害者ならではの公的な優遇制度をフル活用しているのも事実だ。とくにメリットを感じるのは、障害者雇用のトライアル制度という。

同制度は厚生労働省が管轄する事業で、障害者を原則3カ月(テレワークは最大6カ月、精神障害者は同12カ月)、実際に雇ってみて適性を見極められる。期間中は月額最大4万円(精神障害者の場合は同8万円)の助成金も事業者側に支給される。

「お試し期間で一区切り、その先は結果次第、という認識を事業者と労働者側の双方で共有できるのは大きい」と川田社長は指摘する。当然、中長期的な雇用を見据えた制度ではあるが、自社にこの人は合わないと判断した際でも断りやすいからだ。

本当にその人材が必要なのか、現場で数カ月かけて見極めるのは、通常の採用活動では難しい。健常者でも入社後に数カ月の試用期間を設けるのは一般的だが、解雇するとなれば相応の理由を求められる。実質的には、やる気や適性を見抜くのは面接での限られた会話に頼らざるを得ない。

ところが障害者であれば、制度の利用によって自社との的確なマッチングを果たせるのだ。しかも助成金までもらえる。川田製作所では、トライアル期間中に個人の生産目標を設定。クリアすれば継続雇用するという形を取っている。これまでに3人の実習を受け入れ、うち1人を採用した。

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