1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

ブラジルで『AKIRA』はやらせた日系3世の挑戦 今年は『ゴジラ-1.0』や『君たちは』の配給も

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 13時0分

そこで同社が新たに乗り出したのが劇場上映だった。1991年7月、最初に選んだ作品が、大友克洋監督の『AKIRA』だった。

「配給会社向け先行版映像を見て、本当に気に入ったんです。東宝と原作漫画を取り扱う講談社と商談を行い、ブラジルでの上映権を獲得した。この作品は行ける!という若さゆえのフィーリングもありましたね」と佐藤氏。

『AKIRA』は時代を先取りしたアニメとして、ヨーロッパで高い評価を得ていた。佐藤氏は、その評判を携えて劇場に売り込んだが、当初はなかなか受け入れてもらえなかった。

「そのころのブラジルでアニメの劇場上映といえば、吹き替えのディズニー作品一択。字幕付きで、かつ大人向けである『AKIRA』に対する反応は冷たく、多くの劇場から配給を断られました」(佐藤氏)

ようやく上映にこぎつけたものの、最初はサンパウロ市内1カ所。それでもPR会社を雇って大々的に宣伝し、7本の上映用コピーフィルムをフル活用し、上映の場を広げていったところ、1年間のロングラン上映を成し遂げ、計25万人の観客を動員した。

時代は変わり、世界の映像コンテンツ産業は、配信サービスが主流となっている。

大手のNetflixが配信サービスに移行した矢先の2011年に、Netflixのブラジルで配信される映像作品のコンテンツ・アグリゲーターとして初めて契約したのが、サトウ・カンパニーだ。

コンテンツ・アグリゲーターとは、制作会社などからコンテンツを収集し、配信会社に提供する事業者だ。作品の良し悪しに加え、担当する国や地域で受けるかの判断が委ねられている。

Netflixがオリジナルコンテンツの制作に力を注ぐようになった今、同社は再び劇場公開の配給に力を入れ始める。2023年7月からは東洋人街リベルダーデのブラジル日本文化福祉協会(以下、文協)の多目的ホールを活用し、週末限定で日本やアジアの映画を上映する「サトウ・シネマ」を開催する。

「サトウ・シネマは日系社会への恩返しも込めています」と佐藤氏。

1950年代から1980年代まで、リベルダーデには日本人移民をターゲットにした東映、東宝、松竹、日活の直営映画館があった。ブラジルに映画館がほぼなかった当初から、この地区は映画館によって栄えた歴史がある。

「残念ながら今、この地区には映画館がないので、私たちの企画で、さらに文協とリベルダーデをアピールできたらと思っています」(佐藤氏)

日本の映像コンテンツの可能性

佐藤氏に、日本の映像コンテンツのブラジルにおけるポテンシャルについて尋ねてみると、「日本アニメの作画の素晴らしさは言うまでもないでしょう」と答える。

「これは韓国ドラマにもいえますが、ストーリーテリングが素晴らしいです。今回の『ゴジラ-1.0』と『君たちはどう生きるか』は、ハリウッドの大作にはない物語の展開があり、多くの人にとって新鮮な驚きが多いのです」(佐藤氏)

佐藤氏は、日本製映像コンテンツに関して、ブラジルには眠っている潜在力があると考える。アニメだけでなく、ドキュメンタリーや実写の作品をブラジルで紹介するのが使命だという。「勝負はこれからですね」と佐藤氏は力強く話した。

仁尾 帯刀(海外書き人クラブ):ブラジル・サンパウロ市在住フォトグラファー

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください