「空港施設vs.物言う株主」でANAが思わぬ被弾 株主提案のリムが決算説明会で「舌戦」を展開
東洋経済オンライン / 2024年6月17日 8時50分
JALとANAの間で事前合意があったのでは、とさらに切り込んだわけだ。松浦氏は日本経済新聞社の元記者で、経済事件などを取材してきた経歴の持ち主でもある。
答えたのは空港施設で経営企画などを担当している笹岡修取締役。「われわれがそのような認識をしているわけでなく、両者の関係について把握していたりコメントしたりはできない。ご理解いただければ」と述べた。
3つ目の質問も昨年の社長解任に関する内容だった。ただ松浦氏の述べた見立ては、思わず耳をそばだてる内容だった。
プロキシーファイトをちらつかせた?
空港施設幹部は総会に諮る取締役選任案について理解を得るため、大株主の元を訪れた。そうすると大株主の幹部が、「バランスを失した取締役選任案には賛同できない。このまま総会に諮るなら『DBJ』も巻き込んでプロキシーファイト(委任状争奪戦)も辞さない」と言った――。
バランスとは、空港施設の社内取締役におけるJAL出身者とANA出身者の人数を指す。慣例では1名ずつだったところ、昨年の総会に諮られた案は再任を否決された社長を含めJAL出身者が2名、ANA出身者が1名だった。
こうした背景から反発した大株主はANAだったとみられる。DBJは3位株主の日本政策投資銀行のことだ。JALやANAと異なり、社長の再任に賛成票を投じた。
「なぜ株主共同の利益に反する発言をするような大株主から取締役を受け入れるのか。その後、田村社長は抗議したのか」。この松浦氏の問いに田村社長は、「エアラインに抗議はしていない」と答え、「航空業界の知識・経験を持つ人材は当社として必要と感じている」と述べた。
東洋経済がANAに事実関係を問い合わせたところ、メールで回答を得た。プロキシーファイトに関する発言の有無については「子細までは覚えていない」とのこと。そのうえで次のように説明する。
「空港施設の企業価値向上に資する体制がどうあるべきかという観点から、次の時代を担う人材を尊重し、人心を一新すべきと考え、取締役選任議案に対する当社の考え方を事前に説明したことは事実。会社提案内容が変わらなかったため、事前に説明した内容のとおり、議決権を行使した」
そもそもJALとANAからの天下り役員の存在はどう考えればいいのだろうか。焦点となるのが2社と空港施設との間における利益相反だ。
リムは「空港施設がここ数年来求めてきた冷暖房費などの条件改定に2社などが消極的だったとされている」と問題視する。対するJALとANAの見解は次のとおりとなる。
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