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M&A仲介大手「全社株価急落」の深い理由 高額手数料や悪質ダイレクトメールにメスも

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 10時0分

規制強化による収益悪化懸念から、6月10日にM&A仲介大手の株価が一斉に急落した(M&A仲介協会公式サイト)

6月10日にM&A仲介大手の株価が一斉に急落する事態が起きた。7日に政府が開催した「新しい資本主義実現会議」で、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の2024年改訂版案が公表されたことが一因とみられる。

一斉に急落したM&A仲介大手の株価

この中で、「M&A仲介事業者の利益相反構造」や「高額な最低手数料」といった問題が指摘され、今後の規制強化による収益悪化への懸念が広がった。

最も株価を下げたのがM&A総研ホールディングス(HD)。一時は前週の終値から700円(17.9%)安の3205円をつけ、年初来安値に見舞われた。その他、日本M&AセンターHDも年初来安値となり、業界全体に売りが広がった。

横たわる利益相反構造

近年、後継者不足に悩む中小企業が増加する中、事業承継の手法としてM&Aを活用する機会が増えている。M&Aの売り手と買い手の間に入り、価格交渉や手続きなどを支援するのがM&A仲介事業者だ。

政府が改訂版案でM&A仲介の問題を指摘したのは、仲介事業者が自らの利益を優先することで、中小企業のM&Aをめぐるトラブルが続出しているからだ。

仲介事業者は、売り手と買い手の間に立つ「両手取引」を行い、双方から報酬を得る。売り手は少しでも高く売り、買い手は少しでも安く買いたいインセンティブが働くため、一方の利益を追求すれば他方の不利益となる「利益相反」の構造が横たわる。

もっとも、関係者によれば「買い手側の利益が優先されやすい傾向にある」という。

積極的なM&Aによってグループ経営を展開する企業は業界内で「ストロングバイヤー」と呼ばれ、仲介事業者にとって継続的な取引が期待できる「太客」だ。それゆえ仲介事業者では、こうした買い手が安く会社を買収できるように交渉を進めるケースがあるようだ。

なかには、「売り手の売却希望価格よりも安い価格で成約した場合に、差額の一部を買い手から報酬として受け取っている事例もある」(仲介事業者幹部)という。

こうした問題は以前から指摘されてきた。大手仲介事業者らでつくる「M&A仲介協会」は、昨年12月に自主規制を定めている。そこには「構造的にいずれか一方の依頼者との間で利益相反のおそれが生じることも説明しなければならない」といった内容が含まれている。

それもあってか、関係者の一部では「政府が規制強化に乗り出すにしても、あくまで既存の自主規制に沿った内容になるはず」と楽観視する声もある。実際、今回の改訂版案に明記されている「手数料体系の開示」などはすでに自主規制に含まれている内容だ。

高額手数料の維持は困難か

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