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「積極財政派」「財政再建派」提言に見る希望と絶望 「PB黒字化目標」に代わる新たな財政政策の指標

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 10時0分

これは、簡単に言えば、次のような考え方に基づく。

まず、企業貯蓄がプラスであるということは、投資不足を意味する。したがって、経済が成長するためには、企業貯蓄はマイナスでなければならない。

次に、「『民間部門の収支』+『政府部門の収支』+『海外部門の収支』=0」であるから、海外部門の収支を無視すれば、「『民間部門の黒字』=『政府部門の赤字』」が成り立つ。

要するに、民間が貯蓄超過の時は財政赤字になるということであり、民間が投資超過の時は財政黒字になるということだ。

「失われた30年」に起きた逆説的現象

もし、民間が貯蓄超過にもかかわらず、財政赤字を強引に削減したとしたら、何が起きるか。それは、国民所得の減少を通じて、民間貯蓄が減少することになる。その結果、GDPの縮小を通じて、対GDP比政府債務残高はかえって悪化することにもなりかねない。

つまり、財政赤字の削減努力によって、財政健全化(対GDP比政府債務残高の低下)から遠ざかるという逆説的な現象が起き得るのだ。

そして、この現象こそが、「失われた30年」に起きたことだった。

1998年以降、日本経済における「ネットの資金需要」はマイナスどころか、ほぼ一貫してプラスであり続けた。それにもかかわらず、日本政府は、プライマリーバランス黒字化目標の堅持など、財政支出の抑制に固執し続けた。そのことが、長期停滞のみならず、財政悪化をももたらしたのである。

したがって、企業貯蓄がプラスの間は、財政赤字は拡大してよい、いやむしろ、拡大すべきだということになる。

そして、財政赤字を拡大してよいのならば、需要を創出し、企業投資を促すための政府支出の拡大や減税が可能となる。もちろん、防災、社会保障、環境、教育、科学技術、少子化対策、デジタル化、安全保障などへの支出を拡大することもできる。こうした積極財政により、短期のみならず、中長期的にも持続する経済成長が可能となる。

では、財政赤字は、どこまで拡大できるのであろうか。

企業貯蓄がマイナスに転じたら、つまり投資超過になれば、経済は成長する。ただし、民間投資が増えすぎて、ネットの資金需要がマイナス10%になったら、バブル経済となる。バブル経済を引き起こさないようにするには、ネットの資金需要をマイナス5%程度に維持すべく、財政赤字を削減する必要がある。つまり、財政健全化が求められるのは、民間投資が過剰になった場合のみだということである。

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