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キリン、ファンケル買収に透ける「期待と不安」 経営トップ、ファンケル関係者も不在の異例

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 8時20分

各国の食品規制対応に詳しいブラックモアズの人材や、同社のシェアが高いオセアニア・東南アジアへの販路を獲得しており、ファンケル商品も拡販できる可能性がある。

吉村氏は「ヘルスサイエンスをビール・飲料事業に匹敵する事業に成長させたい。完全子会社化で制約を一気に解消し、成長軌道に乗せていく」と意気込む。今後10年以内に同事業で売上収益5000億円を達成し、アジア太平洋地域で最大級のヘルスサイエンス・カンパニーを目指すという。

ファンケル化粧品はどうなる?

一方、不透明感が払拭できないのが、ファンケルの化粧品事業の成長戦略だ。化粧品はファンケルの売上高の5割を占める主力事業で、40年以上続く祖業だ。コロナ禍ではインバウンド需要の剥落に苦しんだが、主力の「マイルドクレンジング」などメイク落としを軸に現在は回復基調にある。

「ファンケルの強みはオンラインとリアル店舗の連携。顧客データを武器に固定客化を進めている」と語るのは化粧品業界に詳しい大和証券の広住勝朗シニアアナリスト。通販や直営店舗での販売といった販売チャネルが売り上げの7割を占め、商品のリピート率も高い特徴がある。

今年5月、ファンケルの島田和幸社長は「今期の他社の利益計画がピークの2~5割にとどまる中、当社は2019年度以降5年ぶりに、過去最高の売り上げ、利益を更新する見通し」と自信を語っていた。

今後の成長のカギは、現状売り上げの1割程度である海外事業の拡大だ。2026年までの中期計画では海外事業の年間売上成長率を12.1%とし、日本で稼いだキャッシュを海外に積極投資する方針。スキンケア等を展開する「アテニア」のベトナム進出や、中国富裕層をターゲットにした「ブランシック」等を強化する。

しかし、キリンHDとのさらなるシナジーについては不明なままだ。

キリンHDはファンケルの化粧品について「(海外展開について)可能性があれば探っていきたいが、TOBが成立してから進めていきたい」(キリンHDの吉村氏)と、具体的な戦略は語らなかった。

そもそも、14日の会見にキリンHDの南方健志社長COOや磯崎会長CEOの姿はなく、出席者はキリンHDの吉村透留・ヘルスサイエンス事業本部長と山﨑大護・経営企画部主幹の2名のみ。ファンケル側はトップはおろか、広報担当者すら現場に居合わせない異例の会見だった。

ファンケルのよさを残せるのか

キリンHDの磯崎会長CEO(当時社長)は2022年、東洋経済のインタビューに対し、「100%子会社としたとき、ファンケルのよさを残せるのかはわからない。ファンケルは機動力があり意思決定が速い企業。一方のキリンは、国に酒税を納めていることもあって非常に慎重な企業で、カルチャーに違いがある」と語っていた。

買収を発表した翌営業日の17日、キリンHDの株価は14日終値から2.87%安の2068円と下落した。マーケットは買収に懐疑的な見方をしているようだ。

キリンHDは買収を経てファンケルとのシナジーをさらに強化し、具体的な成長戦略を示していくことが求められる。

田口 遥:東洋経済 記者

伊藤 退助:東洋経済 記者

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