ガス計画乱立のフィリピン、問われる日本の責任 環境や漁業への悪影響懸念、日本に中止要請も
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 9時30分
数十件にものぼるLNG(液化天然ガス)輸入基地やガス火力発電所の建設計画が存在するフィリピンで、漁業関係者がプロジェクトに反対の姿勢を強めている。
5月30日、LNG基地が計画されている地域の漁民連合のリーダーがフィリピンの環境NGO(非政府組織)の関係者とともに来日して記者会見を行い、国際協力銀行(JBIC)や日本の3メガバンクによるガス関連事業への支援の中止を求めた。
日本ではあまり知られていないが、フィリピンはベトナムと並び、LNG輸入基地やガス発電所などガス関連インフラの建設計画が目白押しだ。日本のエネルギー企業や総合商社、官民の大手金融機関も、投融資や技術協力を通じて関与を深めている。
【写真】来日して記者会見を行ったフィリピンの漁民とNGO関係者
フィリピンに本拠を置く環境NGOのCEED(Center for Energy, Ecology, and Development)によれば、世界で建設が計画されている新規ガス発電所の65%以上がアジアに集中。中でもフィリピンは計画されているガス火力発電所の設備容量で、ベトナムに次ぐ東南アジア第2位となっている。
フィリピンでのガス火力発電の計画規模は39基、約42.6ギガワット(約4260万キロワット)にものぼり、建設が計画されているLNG輸入基地の数は7施設、その設備能力は約2800万トンにもなるという。フィリピン政府は電力需要の増加への対応や、二酸化炭素(CO2)排出の多い石炭火力発電への依存度引き下げを目的としてガス火力へのシフトを目指しているが、過剰投資に陥りかねないリスクをはらむ。
プロジェクトが乱立、漁業などに悪影響も
建設計画の集中は、地域住民の生活や環境に大きな負荷を与えかねない問題となっている。
今回、来日したフィリピン・ルソン島中部バタンガス州の漁民連合で副会長を務めるマキシモ・バユバイ氏によれば、「バタンガス州では約20年前に最初のガス火力発電所が建設されてから海の汚染がひどくなり、漁業ができる場所も制限されるようになった。多くの漁民が生活の困窮に直面している。LNG輸入基地や新たな発電所の稼働で状況はさらに厳しくなる」という。同漁民連合はバタンガス州の漁民約1万人で組織されている。
首都マニラから南へ約80キロメートルと比較的近距離にあるバタンガス州は、フィリピンでも特にガスエネルギー関連施設の建設計画が集中している地域だ。バタンガス州ではすでに1基のガス火力発電所と2つのLNG輸入基地が稼働。さらにガス火力発電所9基、LNG輸入基地4施設の建設が計画されている。
この記事に関連するニュース
-
漁業関係者の思いを汲み取った調査と工事計画を 新たな商業用洋上風車の建設を前に検討委員会が初会合
ABS秋田放送 / 2024年6月17日 19時8分
-
ドイツ政府、水素インフラ整備の加速とCCUSの促進に関する法案を閣議決定(ドイツ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月14日 0時0分
-
日系企業、NSW州ポートケンブラ水素ハブや物流施設を視察(オーストラリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月10日 0時15分
-
再エネ、水素・アンモニアなど、JERAが5兆円の戦略投資
財界オンライン / 2024年6月3日 18時0分
-
LNG下落で補助打ち切り ガソリンは継続
共同通信 / 2024年5月22日 18時13分
ランキング
-
1「絶対に来ないで」年金20万円、都内高級タワマンに1人で住む85歳母が、55歳娘を頑なに家へ入れない衝撃理由…強行突破の先の〈目を疑う光景〉【CFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 11時45分
-
2急成長レーザーテック「空売り屋」が標的のナゼ 注目指標「会計利益先行率」ランキングも公開
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 8時0分
-
3大量閉店のミニストップもコンビニ再編の波に飲まれる? 顧客を置き去りにしたファーストフード化するコンビニに未来はあるのか
集英社オンライン / 2024年6月19日 8時0分
-
4MUFGで違法な情報共有、融資を条件に強引営業も 不適切な銀証連携で銀行と証券2社に処分勧告
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 8時20分
-
5伊藤園「お~いお茶ミュージアム」に「大谷自販機」登場 「全国に置いて下さい!」Xで話題に
J-CASTニュース / 2024年6月19日 19時12分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)