急成長レーザーテック「空売り屋」が標的のナゼ 注目指標「会計利益先行率」ランキングも公開
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 8時0分
5カ月を費やした300ページ超のレポートで得たものとは——。
【業績とランキングを見る】レーザーテックの業績は急増。そして、次のターゲットは?「会計利益先行率」が高い企業をランキング
企業の不正会計を調査し、カラ売りを仕掛けたうえで調査レポートを公表する「カラ売りファンド」。上場企業で圧倒的な売買代金を誇る、半導体関連のレーザーテックがターゲットになった。
「カチカチと秒読みをはじめた時限爆弾。場所は日本。厖大な詐欺を働いている企業がある。株式市場で売買代金首位の銘柄だ」
刺激的なタイトルでレーザーテックの「不正会計」疑惑を指摘するレポートを6月5日に公表したのは、アメリカのカラ売りファンド、スコーピオンキャピタル。調査には5カ月、20名以上への関係者への取材を行ったとする、334ページにわたる大作のレポートだ。
株の「カラ売り」とは、足元の株価が高すぎると判断し今後は下がると予想されるときに行う投資手法だ。証券会社から株を借りて市場で売り、値下がり時に買い戻して借りた分の株を返却する。株価が下がるほど利益になる。
キャッシュが少なすぎる?
レーザーテックは、最先端半導体の製造に使われるEUV(極端紫外線)露光装置に必要なマスク・マスクブランクス検査装置を手がけている企業だ。現在この分野で競合はおらず、市場を独占している。
同社は、株式市場においてもっとも有名な企業といえる。というのも、2023年の売買代金は約70兆円で全上場銘柄の中で断トツの1位。この5年で約20倍にまでなった株価が個人投資家を呼び寄せている。
膨大な内容のレポートだが、指摘したポイントは、同社が実際に現金として稼ぎ出す営業キャッシュフローが、会計上の純利益に比して少なすぎるという点に集約される。その要因として、棚卸資産(在庫)が多すぎることを問題視。製品のスペックに問題があるのではないか、というものだ。
レーザーテックはレポートに対し、「不正会計の疑惑について明確に否定いたします」と即日公表。翌6日には、会計処理について2ページの反論リリースを追加するなど対応に追われた。
ただ実際、レーザーテックの財務が「異質」なのは事実だ。
同社の業績は最先端半導体の需要増加や、市場での独占的なポジションもあって急激に拡大。純利益は2018年6月期からの5年間で10倍以上に拡大した。
現金の代わりに在庫が積み上がる
この5年で累計1070億円の純利益を計上した一方で、営業活動によって実際に得たキャッシュフローは699億円にとどまる。総資産は同期間で500億円から2715億円まで怒涛の勢いで伸びているが、現預金の計上額は131億円から297億円とほとんど伸びておらず、総資産に占める割合も年々減少している。
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