MUFGで違法な情報共有、融資を条件に強引営業も 不適切な銀証連携で銀行と証券2社に処分勧告
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 8時20分
融資などの取引に乗じて、株式や債券の発行手続きに証券を関与させようとする強引な営業実態も明らかになった。
社債発行の引き受けをめぐり三菱UFJモルガン・スタンレー証券の提案が負けていることを知った銀行の担当者は、「引き受けシェアがまったくないと厳しい。MUFGとしてお願いしたい」とシェアの引き上げを再三要請。要請が断られると、銀行融資の条件を優遇するといった腹案を提示し、結果的に証券の引き受けシェアが上昇した。
ほかの顧客企業に対しても、公募増資に際して系列証券の引き受けシェア拡大を融資の条件にするなど、不適切な抱き合わせ販売が複数あった。
MUFGは監視委から勧告が出された6月14日に「厳粛に受け止める」との声明を発表。法令順守の意識が不十分であり、モニタリング体制も十分でなかったとし、再発防止策に取り組むとした。
系列内の銀行と証券による銀証連携ビジネスは近年、規制緩和が進んできた。情報遮断を行うFW規制も2022年に監督指針が改定され、これまでよりも簡単に情報共有をすることが可能になった。ただ、今回の事案は改定後の指針でも禁止されているものだ。
規制緩和の議論にも影響
今回の勧告は、今後の規制緩和の議論にも影響を及ぼしそうだ。
業界関係者は「決められたルールを守らないのでは、緩和に向けた議論ができなくなる」と懸念する。監視委も「収益偏重で顧客が軽視されている」「こうした問題が起こるリスクは予見しうるのに内部管理体制が十分ではなかった」と苦言を呈する。
MUFGを「御三家」の一角とする三菱グループには、根本理念「三綱領」がある。「所期奉公(期するところは社会への貢献)」「処事光明(フェアプレーに徹する)」「立業貿易(グローバルな視野に立つ)」の3つだが、目先の競争を意識するばかりに、こうした精神を見失っていなかったか。一度見直す必要がある。
高橋 玲央:東洋経済 記者
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