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精神科医も悩む「患者本人が望まない入院」の問題 必要であっても日常的な罪悪感を抱えている

東洋経済オンライン / 2024年6月20日 17時0分

なにか分からないけれども、医療コンテンツが医者なり一般人にあれこれ言われているとき、なぜか自分が批判を受けている感覚になる。何か、言い訳や弁明をしないといけない気がしてくるのだ。おそらくそれはTwitterでなにやら述べている医師なども同じで、弁明しないといけない感じがするから弁明しているのではないかと思うのである。

例えばドキュメンタリーで医療訴訟の問題をやっていたとすると、私自身は訴訟を受けたことはないけれども、訴訟の種のようなものは毎日毎秒そこいらじゅうに散らばっており、毎度なんとかかわしにかわして生きているわけで、一つ判断を、あるいは言葉を間違えば糾弾される側という感覚が常にある。だから、訴訟が取り上げられ、例えば担当医師の対応がまずかった、みたいな話で一般の人や医療者が槍玉にあげているのをみると、なにか自分が批難されているような気がして、心の健康に良くない。

つい先日は、精神科医療のドキュメンタリーがあったようで、ミュートしてもミュートしてもその話がタイムラインに流れてきた。定期的に話題になる強制医療の是非の話で、とくに話題になったのは強制医療の是非云々の話以上に、論外なレベルの扱いを患者さんに対してしていた病院の話らしい。

いま論外な強制医療と述べたが、では、論外ではない強制医療とはなんなのか。精神科病棟では、強制入院が法的に定められている。措置入院という行政が決める強制入院に加え、医療保護入院という制度がある。医療保護入院というのは、病院の精神保健指定医と患者の保護者との合意で患者を入院させることのできる制度である。

これは、患者がまったく同意をしていなくとも入院にできるため、強制入院、もしくは非自発入院などとも呼ばれる。かなり多くの患者さんが入院のときに「人権侵害だ!」と言うのだが、実際ふつうに考えれば人権侵害である。しかし、この人権の制限は精神保健福祉法によって定められている。

強制入院が成り立つ事例

どういうときにこの強制入院が成り立つのかといえば「入院治療の必要があるが、患者が同意できないとき」である。例えば統合失調症の幻覚妄想状態で、幻聴に命令されて全裸になってセンター街を走り回ったり、正体不明の諜報組織に付け回されているという妄想があり、道ゆく人に「知ってるんですよあなたたちの狙いは!」などと言って回っている場合、これは多くの場合入院治療の必要がある。しかし、患者さんには病識がないことが多い。つまり、自分の考えていることが妄想であるとか、耳に聞こえてくる声が幻聴であるという認識がないため「病気なので入院しましょう」などと医者に言われても、ピンとこないのである。

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