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中国自動車「上汽集団」、全固体電池を自社生産へ スタートアップと手を組み、27年からEVに搭載

東洋経済オンライン / 2024年6月20日 18時0分

上汽集団は自社生産する全固体電池を傘下ブランドの高級EVから搭載していくとみられる。写真は同社傘下の智己汽車の新型EV「L6」(上汽集団のウェブサイトより)

中国の国有自動車大手の上海汽車集団(上汽集団)は5月24日、全固体電池の自社生産に向けたロードマップを発表した。2025年に全固体電池の生産ラインを建設し、2026年に量産を開始。同時並行で全固体電池を搭載する新型EV(電気自動車)の走行試験を進め、2027年に発売する。

【写真】上汽集団が開発中の全固体電池。採用する複合電解質の具体的な組成は明かしていない(同社傘下の智己汽車のウェブサイトより)

この計画を実現するため、上汽集団は全固体電池の研究開発を手がけるスタートアップ企業、清陶能源(チンタオ・エナジー)とパートナーシップを組む。上汽集団は清陶能源の株主でもある。両社は(全固体電池の事業主体となる)合弁会社の上汽清陶能源科技を2023年11月に設立しており、出資比率は清陶能源が51%、上汽集団が49%となっている。

次世代電池の本命

全固体電池はEV用の「次世代電池」の本命として、自動車業界の期待を集めている。現在主流のリチウムイオン電池との大きな違いは、電解質に液体ではなく固体を用いることだ。

液体電解質の弱点である液漏れ、発火、破裂などのリスクが低いため、正極と負極にエネルギー密度がより高い材料を用いることで(単位体積当たりの容量を増やし)、EVの航続距離を伸ばすことができる。

しかし解決すべき技術的課題も少なくない。固体電解質は酸化物系、ポリマー系、硫化物系など複数の材料が研究されており、それぞれに長所と短所がある。そんな中、上汽集団と清陶能源はポリマー系と無機系の材料を組み合わせた複合電解質を採用した。

上汽集団の発表によれば、開発中の全固体電池はエネルギー密度が1キログラム当たり400Wh(ワット時)、液体電解質の電池よりも安全性が高く、大規模生産を通じてコストも大幅に下げられるとしている。なお、同社は採用する複合電解質の具体的な組成は明かしていない。

中国政府直属の最高研究機関である中国科学院のメンバー(院士)の欧陽明高氏によれば、ポリマー系の固体電解質の長所は材料が柔らかく、電解質と電極の接触を緊密にできることだ。製造コストも相対的に安い。

一方、ポリマー系の欠点はイオン伝導率の低さであり、電池の高容量化や高速充電への対応では(他の材料より)不利とされる。

トヨタやCATLは「硫化物系」

全固体電池の研究開発における世界の先頭グループでは、現在は硫化物系の固体電解質が主流になっている。例えば日本のトヨタ自動車や中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は、いずれも硫化物系を採用する。

「硫化物系の全固体電池が(他の材料よりも)先に量産にこぎつける可能性が高い」。CATLのチーフ・サイエンティストを務める呉凱氏は、財新記者の取材に以前応じた際にそう述べた。

とはいえ、呉氏は硫化物系の技術的課題も率直に認め、次のように補足した。

「あらゆる要素が完璧な電解質は存在しない。硫化物系の固体電解質は空気中の水分と反応して有毒ガスを発生するため、(事故を予防する)特別な生産技術が必要だ。そのため製造コストが割高になる」

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月25日

財新 Biz&Tech

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