阪急阪神HDの会長再任を「阪神ファンが救った」説 今年の総会は「賛成率57%」とギリギリセーフ
東洋経済オンライン / 2024年6月20日 8時0分
現在75歳の角会長は1973年に阪急電鉄に入社。2003年に同社社長に就任した。そして2006年の阪神電気鉄道との経営統合を経て、同年に阪急阪神HDの社長に就いた。2017年には代表取締役会長とグループCEOを兼任し、現在にいたる。
阪急電鉄時代から数えると、実に20年以上もの長期間にわたり、グループの経営トップに君臨している。
「高すぎる」という声がある57%の賛成率について、関係者の間には「運営する阪神タイガースの熱烈なファンが下支えした」との見方も出ている。阪急阪神HDの株主構成は4割以上が個人株主。しかも阪神タイガースのファンが多いことで知られる。
阪急阪神HDの株主でタイガースファンでもある50歳代の男性は、「昨年の日本一の立役者である岡田彰布監督は角会長が就任を後押ししたとされる。角会長がいなくなると岡田監督も退団してしまうことが懸念され、それでは困る」と語る。
なお株主総会では、タイガースに関する質問が出ることも定番となっている。「外国人のミエセス選手とノイジー選手は活躍していないのになぜ起用するのか」など、今年は2件の質問があった。
業績は高水準が続き良好
株主総会では波乱が起きたものの、阪急阪神HDの目下の業績は順調に推移している。2024年3月期は営業利益1056億円(前期比18%増)と、高水準の利益をたたき出した。鉄道事業の旅客数が回復したことに加え、タイガース優勝の特需によりエンタメ事業が収益を押し上げた。
今2025年3月期の営業利益は1058億円と横ばいの見通し。だがこれは、タイガース優勝の特需がないという前提の数字だ。しかも私鉄大手は、期初に慎重な計画を出す傾向がある。鉄道やホテル事業が堅調なことを考えると、今期の収益が上振れる可能性は十分にある。
大型再開発プロジェクトも着々と進んでいる。グループ会社が事業者として参画する「うめきた2期地区開発事業(グラングリーン大阪)」(大阪市北区)は、今年9月の先行街開き、2027年度の全体開業を計画する。「芝田1丁目計画」(大阪市北区)では、阪急三番街や大阪新阪急ホテル、阪急ターミナルビルの全面改装について、「竣工時期などは未定だが(全面改装は)構想にあり、目下検討中」(IR担当者)とする。
賛成率とともに開示された2024年3月期の有価証券報告書。そこでは優先的に対処すべき課題として、「宝塚歌劇団に対するガバナンス機能の強化」などを掲げた。昨年の有価証券報告書にはなかった記述だ。
業績は良好ながらも角会長を含めた経営陣がこの先どのような動きを見せるのか。多くの株主が見守っている。
梅咲 恵司:東洋経済 記者
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