航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 17時0分
2024年1月2日、羽田空港で起きた航空機同士の衝突事故では、管制官とパイロットの交信が注目されました。事故原因はまだ究明されていませんが、航空管制が空の安全において非常に重要な位置を占めていることは間違いありません。
航空管制の世界は、意外に思えるほどに「人と人のコミュニケーション」によって成り立っています。ひとつのミスも許されないなか、管制官とパイロット、さらには管制官同士で、どのような交信を行なっているのか?
元・航空管制官で現在、航空評論家であるタワーマン氏の著書『航空管制 知られざる最前線』から一部を抜粋し、間断ない離陸・着陸を捌くプロフェッショナルの舞台裏に迫ります。
世界中の管制官が英語で交信を行なう理由
管制官は、安全かつ効率的に航空交通を管理するのが仕事です。しかし、実際に飛んでいるのはパイロットで、管制官は管制室またはレーダー室の内部にいます。管制官がコントロールできる方法は、無線によるパイロットとの交信のみ。つまり、コミュニケーションこそ、管制官の「最大の武器」なのです。
パイロットとの交信は、基本は英語で行ないます。国際航空機関であるICAO(国際民間航空機関)はもちろんのこと、日本の管制の〝バイブル〞である「管制方式基準」にも「管制用語は英語または母国語を原則とする」と記されています。なぜ、英語なのか。その理由は2つあると私は考えています。
1つは、当然ですが「共通言語が必要」だということ。世界中、さまざまな国で航空機が行き来し、パイロットの国籍もさまざまです。やはり共通語となると英語が適当でしょう。では、国際線が発着しない国内線専用の空港ではどうかというと、やはり英語が原則です。ただし、中国のように国内パイロットの便に限って、母国語を使っている国もあります。
ある日本人パイロットから聞いた話ですが、彼が中国の空港に行ったとき、別の飛行機のパイロットが管制官と何を話しているのかが理解できず、大きな不安を覚えたそうです。
管制官がパイロットに指示しているのか、地上車両の運転手に情報を出しているのかさえもわからなかったといいます。
管制官が何かの指示を出していることは理解できるのですが、その内容が不明なので、別の飛行機がこちらに機首を向けて動き出したりはしないかと疑念が抜けなかったそうです。パイロットの状況認識もまた、航空交通の安全には欠かせないものです。たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います。
「誤解を生まないため」に英語を使う
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