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「授業中の水分補給禁止」学校が大炎上した必然 生徒を束縛するブラック学校へのモヤモヤの正体

東洋経済オンライン / 2024年6月22日 13時0分

「その背景には、時代の変化がある」と言うと、そんなの誰しも気づいていると感じるはずなので、いくつか具体的に挙げてみよう。

「教育」ですべてが許される時代は終わった

まずは、なんでも「教育」と言えば許される時代ではなくなった点だ。これは学校のみならず、家庭でのしつけも同様だが、「あなたの将来を思って、わざと厳しくしているのだ」的な主張が、なかなか受け入れられなくなった。

その要因として、人権や意思が重んじられる時代になったことが考えられる。個人を尊重する価値観が普及するにつれて、権利の強制剥奪と捉えられかねないような指導は、敬遠されるようになってきた。

たとえば「下着の色」を校則で定め、場合によっては教職員によるチェックを行うといった指導は、セクシャルハラスメントの文脈において言語道断だとの意見が、いまや多数派だ。また、運動中に「水を飲むな」といった教育方針も、生存権に関わると、現在ではほとんど支持されていない。

内外からの指摘を受けて、改善に動くのであれば、まだ「時代錯誤だったね」で終わるので、炎上にはつながりにくい。ただ、そこで「アップデートを拒んでいるように思える態度」が表れてしまうと、バッシングの嵐となる。

人権意識の変化は、子どもの話に限らない。教職員についても、これまで「聖職だから」との建前のもとで、過重労働が前提となっていたが、ここ数年ようやく「働き方改革」の一環で、負担軽減を求める声がでてきた。

そこへ来てのコロナ禍だ。コロナ禍以前から進められていた「GIGAスクール構想」が前倒しされる形で、全国の学校にタブレットなど教育用端末の導入が進められた。家庭内から参加するオンライン授業も珍しくなくなった結果、「校舎内での風紀」を前提とした従来の校則は、存在意義が揺らぎつつある。

もっとも感染拡大が収束したことで、「リアル登校」への回帰は珍しくない。しかし自粛を余儀なくされた3年間は、中学でも高校でも、すっぽり学校生活があてはまってしまうほどの期間だ。「新しい生活様式」は、すでに死語になりつつあるが、少なくとも当時は「この変化は一時的な措置ではなく、生涯続くかもしれない」と、先が見えない不安の中で、覚悟していた人も多かっただろう。覚悟を決めてまで変えた習慣なのに、すぐさま「はい、じゃあ元に戻してください」と言われても……と、私であれば困惑する。

そして、ネットメディア編集者としては、SNSの普及にも触れなくてはならない。スマートフォンの普及によって、児童や生徒みずからが「学校の外」を知りやすくなった。その結果、ギャップの可視化が進み、自分の置かれた環境に、強い違和感を覚える子どももいることだろう。より広い視野を持っているはずの保護者も、SNSを通して、自身が「井の中の蛙」だと気づくケースはあるだろう。

わずか20年の間にも、状況は変化している

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