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「朝起きたら足が…」女性を襲った恐怖の"感染症" 経験から悟った「病気から身を守る方法」とは?

東洋経済オンライン / 2024年6月23日 12時0分

由美さんによれば、溶連菌感染症になったときは、仕事の忙しさがピークだった。「そのため、熱が下がると、すぐに仕事を始めてしまいました。忙しさで体力が落ちていたのも腎炎の引き金になったのではないかと、反省しましたね」。

以来、風邪をひいたときや、体調が悪いときにはしっかり休養することを心がけるとともに、友人にも自分の経験を伝えているという。

総合診療かかりつけ医・菊池医師の見解

総合診療かかりつけ医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師によれば、頻度ははっきりしないものの、溶連菌感染症を発症したあとに、「腎炎」(糸球体腎炎)が起こるケースは、ときどきあるそうだ。

なぜ、溶連菌感染症から腎炎が起こるのか。それはこんな仕組みだ。

体に細菌などの病原体が侵入すると、免疫細胞は抗体を作り、異物(抗原)に結合することで、細菌の毒性を弱めようとする。抗体に異物がくっついたものを「免疫複合体」と呼ぶ。

抗体が異物と結合すること自体は、異物から体を守る防御反応であり、大切なのだが、この免疫複合体が体内で大量に作られすぎると、体の臓器に悪さをする場合があるという。

「溶連菌感染症の合併症である腎炎は、免疫複合体が腎臓の糸球体という毛細血管に沈着することで発症すると考えられています」(菊池医師)

由美さんが「しっかり抗菌薬を飲まなければならない」と、症状がなくなってからも抗菌薬を飲み続けたのは正しく、抗菌薬を服用する一番の目的も、この糸球体腎炎を防ぐためだという。

「抗菌薬は、約10日間と長めに処方をするのが特徴。決められた期間や量を服用することで、腎炎を予防する効果が得られるというエビデンス(科学的根拠)に基づいています」(菊池医師)

腎臓の主な働きは血液中の老廃物を濾過し、尿として体の外に排出することだ。このため、腎炎になり腎機能が低下すれば、本来、排出されるはずの水分が体に溜まり、むくみが起こる。

「むくみの原因は1つではありません。突然、足のむくみが起こった場合は、医療機関を受診し、原因となる病気がないかどうかを尿検査や血液検査などですぐに調べてもらいましょう」(菊池医師)

風邪は万病の元、は間違いではない

ちなみに、むくみが原因となる病気のうち、見逃してはいけないものとして、今回取り上げた腎炎のほか、心臓や肝臓の病気がある。

最後になるが、風邪などを発症した際に「安静にすること」についても、医学的な見地から「とても大事」と、菊池医師は言う。

風邪の症状で受診する患者は、「最近、忙しかった」「あまり寝ていない」といった人がとても多いそうだ。

「感染症にかかったということは、それはすなわち体の免疫力が落ちているサイン。だからこそ、免疫力を回復させるために安静が必要なのです。大事なのは栄養と睡眠で、とくに睡眠はしっかりとるようにしてください」(菊池医師)

風邪は万病の元というのは、あながち間違いではない。風邪などの感染症になったときは、仕事をまずは忘れて、しっかり休むように努めたい。

本連載では、「『これくらいの症状ならば大丈夫』と思っていたら、実は大変だった」という病気の体験談を募集しています(プライバシーには配慮いたします)。具体的なお話をお持ちの方は、こちらのフォームにお送りください。

菊池 大和:きくち総合診療クリニック

狩生 聖子:医療ライター

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