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JR西の新型やくも、旧型「暗くて狭い」をどう克服? 目指したのは「我が家のようにくつろげる車内」

東洋経済オンライン / 2024年6月24日 7時30分

今昔の所要時間を見てみたい。「やくも」は山陽新幹線岡山開業とともに誕生した。まだ非電化路線の気動車特急だった1980年頃、強力型で名を馳せた181系をもってしても岡山―出雲市間の所要時間は3時間50分台であった。それが381系への置き換えで3時間前後となった。さすがに電車化、そして振子化の効果は大きい。だが、現在もその所要時間はほとんど変わりないのだ。高速化改良を行った山陰本線内でも時間差はない。つまりは意外と言えば意外なほど、昔の状態が隠れている。

それでいよいよ既存車両の経年が40年に達し、やっと投資の順番が回ってきた。だが、1982年に伯備線の大躍進とともに投入された381系は9両編成9本の81両だったが、今回の273系導入計画は4両編成11本44両で、ほぼ半減である。検索サイトで関西―山陰間を調べると高速バスが筆頭に出てくることも珍しくない。そうした現状で「やくも」をどうすれば維持、そして伸ばしてゆけるか。何が課題で何が取柄なのかを探る。スタートはそこだった。

「まずは本社・支社、運輸・車両に駅・営業から後藤総合車両所のメンテナンス部門の社員も集めて、横断的に議論する場を設けました」

実際の「やくも」の乗客から聞き取り調査を考えたが、コロナ禍の最中で接触は憚られたため、JR社員の家族や周辺から意見、評価を集めることになった。その結果はしかし散々なものだった。所要時間や金額のほか、新幹線から乗り継いだ際の暗さと狭さ、なんとも言えない匂いなど。その一方の伸び代としては、シートベルトをつけずに“ゆとり”を享受できること――つまりはそこに帰結する。

そこで生まれたのが、客室に入った途端の明るい爽やかな空間である。山陰地方の居住環境は北陸と並んで高水準(1人あたりの床面積が広い)であることに鑑み、外観における「沿線の風景に響き自然に映える車体」に対し、インテリアは「山陰の我が家のようにくつろげる温もりある車内」をコンセプトに据えた。新幹線の座席間隔は1050mm(普通車。以下同)なので、同等の1040mmとした。サンダーバード等JR西日本標準の970mmよりも広げた。クッションの厚みや感触も再考した。座席のチルト機構はJR西日本では初採用だ。座席間隔に合わせて窓も大きい。381系は国鉄標準910mmの座席間隔を1994〜98年のリニューアルの際に1000mmに拡げたが、そのために窓割と合わなくなっていた不都合も新車で解消される。空気清浄器などは最近の車両として標準装備している。

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