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ファミレス「ジョイフル」が社員の独立を促す事情 人手不足にあえぐ外食企業が今やっていること

東洋経済オンライン / 2024年6月25日 8時30分

その後、助成金などに支えられつつ、黒字化を実現、2024年6月期決算見込みでは、売上高626億円、経常利益33億円(利益率5.2%)にまで回復する見込みである。

コロナを機に不採算店舗はすでに閉店済みであり、今後は採算の取れる店を、FCオーナーの独立経営に任せるほうが、結果として本部も加盟店も共に利益が拡大すると判断したようだ。

熟練社員がFCを運営することのメリット

FCというと、過去の外食業界においても、本部と加盟店の利害が対立して争議に発展した事例も少なくないが、それは社員独立型ではなく、店舗数を増やすために外部からオーナーを募って新規店舗を出店するケースに起きている。

かつて、焼肉チェーン牛角は成長を加速するため、FC募集を外部コンサルに委託して店舗数の急拡大を図った。ところが、委託先コンサルが自らの収益追求に走ったことで過剰出店に陥り、加盟店との争議が多発して、牛角自体も経営が揺らぎ、MBOにより非上場化、再生ファンドの傘下になった、という事例もある。

このように外部参加者による新規出店というFCは、いわば信頼関係の構築もないまま、見込みで新規出店するため、失敗する店舗が続出するリスクが高い。しかし、すでに直営での実績がある店を、熟練社員の判断で運営する場合は、マーケティングの精度も、本部との連携、信頼も格段に高く、失敗する確率がかなり低くなる。

実際、カレーチェーン最大手のCOCO壱番屋は国内店舗数1200店のうち、1093店舗(2024年2月期実績)がFC加盟店により運営されているが、そのほとんどが独立した社員によって経営されており、その10年継続率は91%であることを開示している。

ほかにも、餃子の王将は732店中190店がFCであるが、この過半が社員独立FCである。鳥貴族もコロナの最中に社員独立専用のFC業態大倉家をスタートさせた。

こうした事例を見れば、社員の独立支援制度を持っている外食企業が各業態のトップ企業であり、社員のキャリアアップ支援を会社方針としている企業が、組織のモチベーションを維持できることを実証している。

賃上げだけが解決策ではない

これからの外食チェーンは、新店開発を本部が行い、一定期間のマーケティング実証をして持続可能な店舗を貢献度の高い社員に渡していく企業が増えるはずだ。

なぜなら、従業員を労働力として扱うのではなく、パートナーとして育て、共存共栄していくという体制を持たない企業に、人は集まらないからである。そして、これは正社員に限ったことではなく、パート・アルバイトから正社員をスカウトしていくうえでも有効であることは間違いない。

人手不足という課題を外食産業の現状を踏まえてみてきたが、この問題、国内の労働集約的産業に共通の問題であることは言うまでもない。解決策は、生産性向上や賃上げといった話として議論されていることが多いように思うのだが、本質的には従業員個人としてのキャリアアップをサポートする気があるか否か、が最も重要なのではないか。

人材確保に賃金水準が最も大事なことは間違いないが、必要条件であって十分ではないだろう。人はパンのみにて生きるにあらず!なのである。

中井 彰人:流通アナリスト

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