「海水温上昇」で日本の周りだけ魚が獲れないなぜ 世界では水産業が成長産業になっている現実
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時30分
まだ効果がある水産資源管理が適用されていないので、残念ながら、悪くなっても中長期的によくなることはありません。次のグラフ(水産白書)は日本の漁業・養殖業の生産量が減り続けていることを示しています。
世界全体と比較してわかる明確な違い
次のグラフは世界全体の漁業・養殖業生産量を示しています。減り続ける日本とは対照的に増加が続いています。青の海面漁業が横ばいなのに対して、ピンクと緑の養殖量が増加していることがわかります。水産物の供給のためには養殖業は不可欠です。
なお青の海面漁業は横ばいで推移していますが、これは魚がこれ以上獲れないので伸びていないということではありません。北欧・北米・オセアニアをはじめ、科学的根拠に基づく資源管理の重要性に気づいている国々は、実際には単年、もしくは数年間は大幅に漁獲を増やすことができることがわかっています。しかしながら資源の持続性を考えて大幅に漁獲を制限しているのです。
科学的根拠に基づき、漁業者や漁船ごとに実際に漁獲できる数量より大幅に少ない漁獲枠が割り当てられています。このため価値が低い小さな魚や、脂がのっていない、おいしくない時期の魚は、自ら獲らないようになる制度なのです。これを個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ)などと呼び、譲渡性の有無などによりいくつかのパターンがありますが、乱獲を防ぐという意味で基本は同じです。
わが国でも個別割当制度(IQ)の適用が、2020年の漁業法改正もあり、ようやく増えはじめました。ただし、実際に漁獲できる数量より割当が大きかったり、漁獲されている魚が小さかったりなど、まだまだ運用面での大きな課題があります。また漁業者の方に、世界の漁業で良好な結果を出し続けていて、自身のためにもなる個別割当制度の内容がまだ正しく伝わっていないことは大きな問題です。海外と日本は違うといったことでは、全然ありません。
世界で水産業は紛れもない「成長産業」
次のグラフは世界全体(赤の折れ線グラフ)と日本(同・青)の生産量を比較したグラフです。世界全体では1980年代の1億トンから2倍に増加して現在は2億トンになっていて増え続けています。対照的に、同時期に日本は同1200万トンから400万トンと3分の1に激減して、さらに減り続けて悪化が止まる気配はありません。
このように、世界と日本の傾向を比較すると「何故これほどまでに違うのか?」という大きな疑問がわくはずです。わが国では青い折れ線グラフのほうしか学校で取り上げないため、水産業は魚が獲れず、後継者もいない厳しい一次産業と習ってしまいます。しかしながら、実際には世界人口と水産物の需要増加を背景に、紛れもない「成長産業」なのです。
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