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サマンサタバサ「上場廃止」で迎える新たな正念場 憧れの平成ブランド、コナカと統合で復活狙う

東洋経済オンライン / 2024年6月26日 8時50分

SNSの普及もあり、若年層にはCMよりもデジタルによる発信が宣伝効果として強くなった。サマンサはこうした若者の消費行動の変化をつかみきれなかったようだ。前出の元社員は「寺田氏は時代の流れに乗り遅れた。打開するために美容家電や化粧品などへ事業を拡大したが、在庫が積み上がるばかりだった」と明かす。

コロナ禍でも客離れが続く

業績が振るわない中、2019年にコナカが助け船を出す。寺田氏が保有していた60%以上の株式のうち、31.3%をコナカの湖中謙介社長に売却した。その後コナカが湖中社長から株式を取得し、サマンサを持ち分会社とした。2020年にはサマンサがコナカ傘下の「フィットハウス」(ブランド雑貨などを販売)を吸収合併し、コナカの出資比率は59.1%に上昇、コナカはサマンサの親会社になった。

サマンサは2020年以降、コロナ禍の行動制限や外出自粛にも苦しんだ。ハンドバッグの需要が減り、店舗販売は苦戦。業績の急降下とともにブランドに対するイメージも変わっていく。全盛期に築いた「憧れのブランド」の力はなくなり、顧客は離れた。

あるアパレル関係者は「かつては娘に『サマンサのバッグを買ってほしい』とねだられていたものだが、今はもう本人は買い続けていない」と話す。当時、サマンサのバッグを購入した若者はストリートやカジュアルの流行にシフトしたか、ほかの高級ブランドを選ぶようになったようだ。

サマンサもブランド復活に向けて策を講じてきた。前社長の米田幸正氏は2022年から「リボーン計画」を断行。物流から商品開発まで全面的な見直しを図った。ブランドコンセプトも再定義し、サマンサタバサとほかのブランドのターゲット層や価格帯を分けるなどの改革を行った。

店舗戦略も、従来の単独ブランドでの出店から複数ブランドの統合型店舗を郊外型のモールに出店するようになった。

コナカからはサマンサへ商品担当の管理部長や人事部長が出向している。採算改善に向けて、委託先の工場や発注数の絞り込みなどを進める。また、コナカの若年層向けの業態「スーツセレクト」で新社会人向けのレディーススーツやバッグ、パンプスの商品開発で協力している。今後も、コナカとの生産委託先の統合などに着手する予定だ。

コナカ傘下で復活できるのか?

それでもコナカによるサマンサ再建には疑問が残る。

コナカはサマンサに資金注入してきたが、サマンサの2019年度から5年間の最終赤字の総額は実に201億円にのぼり、改善の兆しが見えない。コナカも同様に6期連続で最終赤字が続くなど、余裕はない。

業績回復への道筋が見えない中では、さらなる店舗閉鎖やブランドの改廃に踏み切る必要もありそうだ。連続赤字のトレンドを変えられなければサマンサタバサのブランド存続自体も危うくなる。

コナカとの経営統合を機に今度こそ反転攻勢をかけられるか。サマンサの正念場はまだ続く。

井上 沙耶:東洋経済 記者

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