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チリのリチウム資源「国有化」に中国大手が待った 天斉鋰業、出資先のSQMに特別株主総会を要求

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 18時0分

チリ政府は2023年、同国が世界最大の埋蔵量を持つリチウム資源の国有化を宣言した(写真はSQMのウェブサイトより)

世界第2位のリチウム生産企業であるチリのSQM(ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ)。同社の実質国有化を進めるチリ政府に対し、SQMの第2位株主である中国のリチウム大手の天斉鋰業(ティエンチー・リチウム)が待ったをかけようとしている。

【写真】は合弁契約に署名するSQMとコデルコの経営トップ(コデルコのウェブサイトより)

天斉鋰業は6月3日、SQMが銅生産で世界最大手のチリ銅公団(コデルコ)と合弁会社を設立する計画に関して、チリ金融市場委員会(CMF)に申請書を提出したと発表。その中で、SQMに対して合弁会社の設立前に特別株主総会を招集し、株主の3分の2以上の同意を得るよう要求したことを明らかにした。

チリ国営企業が支配株主に

その3日前の5月31日、SQMとコデルコは約1年間にわたった交渉を経て合弁契約に署名した。両社の合弁会社が発足すれば、チリのガブリエル・ボリッチ大統領が2023年4月に宣言したリチウム産業の国有化が、初めて具体化することになる。

SQMとコデルコの合弁契約は2025年初めに発効し、合弁会社の出資比率は(国営企業の)コデルコが51%、SQMが49%となる。また、合弁会社の営業利益の70%はチリ政府に帰属し、2030年からはこの比率が85%に引き上げられるとともに、合弁会社の業績がコデルコの連結決算に組み入れられることになっている。

(訳注:SQMはチリ政府との過去の合意に基づき、リチウム資源の採掘権益を2030年まで認められている。同社はその延長と引き換えに、新設する合弁会社への権益譲渡を受け入れた)

天斉鋰業の立場では、SQMの実質国有化はとても無条件では受け入れられない。同社は2018年12月、40億6600万ドル(約6395億円)もの巨費を投じてSQMの発行済み株式の23.77%を買収し、現在も同22.16%を保有している。

ただし、株式取得時に結んだ契約の縛りにより、天斉鋰業は純粋な投資家としてSQMから配当金を受け取るのみで、経営上の意思決定に直接関与することはできない。

SQMとコデルコの合弁交渉はそんな中で進められた。コデルコが支配株主になる合弁会社がSQMのリチウム権益を取得し、その業績がコデルコの連結対象になれば、天斉鋰業のSQMに対する権益が毀損する恐れがある。

減損処理を迫られるリスクも

天斉鋰業の6月3日付の声明によれば、同社はチリの3人の法律専門家に依頼し、SQMとコデルコの合弁契約のプロセスが法規に則っているかどうかを検証した。その結果、SQMは特別株主総会を招集して株主の承認を得る必要があると、3人全員の見解が一致したという。

仮にSQMが天斉鋰業の要求に応じず、合弁会社が計画通りに発足した場合、SQMは(チリ政府の認可が切れる)2031年にはリチウム事業の支配権を失う。このことは、合弁会社の業績がSQMの連結決算に(持ち分法に基づいて)部分的にしか組み入れられなくなることを意味する。

「SQMの(連結決算上の)収益力が低下し、企業評価額や配当金に(マイナスの)影響が及ぶことになれば、わが社は投資の減損損失の計上を迫られる可能性がある」。天斉鋰業は声明の中でそう懸念を示した。

(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は6月3日

財新 Biz&Tech

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