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ソフトバンク孫氏が超知能「ASI」にご執心な理由 癌や事故をなくして人類をより進化させる

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 10時0分

孫氏は「(Armベースの)NVIDIAのGrace CPUは、同じ計算をするのに電力消費が圧倒的には少なくできるようになりました」と強調。「(ASIの普及において)電力は根本問題ですね。これから最大ボトルネックの一つになる」と述べ、この技術の重要性を環境問題と関連付けた。

また、ソフトバンクグループは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じた多くのAIスタートアップに出資してきた。孫氏がプレゼンテーションの中で紹介したのは、自動運転のWayveとロボットのボストン・ダイナミクスだ。

Wayveはイギリスに拠点に置く自動運転スタートアップで、5月にソフトバンクグループ主導で10億ドルを調達した。同社はLiDARや高精度マップが用意されていない道路でも運転できる自動運転プログラムを開発している。

ボストン・ダイナミクスはソフトバンクグループがかつて子会社化したロボット関連企業だ。犬型や人型の多関節ロボットで知られている。現在は韓国の現代自動車へ売却しているが、ソフトバンクグループは20%の株式を保持している。

Wayveが開発するような自動運転技術や、ボストン・ダイナミクスが開発するようなロボットは、ASIにとって現実世界とのインターフェースとなる。自動運転車や高度なロボットは、ASIが物理的な世界を認識し、情報を収集する“目や耳”となり、そして直接的に干渉するための“手足”ともなる。これらの技術はASIの能力を現実世界に拡張し、その影響力を物理的な領域にまで広げる重要な役割を果たすことになる。

「スマートロボットがASIにつながると、工場で物を生産したり道を掃除したり、お買い物に行ったり掃除、洗濯、建設、あらゆる物理的なことまでこなすようになる」(孫氏)

短期的業績は「誤差」と一蹴

ただ、孫氏がASIへの夢物語を語ったのは、株主総会という場であったことは留意しておくべきだろう。

ソフトバンクグループの業績は、前年度の大幅赤字から改善したものの、依然として不安定な要素を抱えている。2024年3月期は、アリババ株式の売却やArm社の株式公開により赤字幅を抑えることができたが、根本的な収益構造の改善には至っていない。

孫氏は、株主価値(NAV)が27.8兆円に達したことを強調しているが、その価値の多くはArm株式に依存しており、グループの価値評価が特定の資産に大きく左右される不安定さを示している。

プレゼンテーションでは、現状の課題への言及は少なく、孫氏はむしろ、こうした投資家の関心を相対化するような発言が目立った。

「壮大な使命と壮大な夢、強い思いに比べたら、1日今日株価が上がったの下がったとか、自己株買いするのかとか、配当どうとか、小さいじゃないですか。今日株式総会で聞きたいですか」(孫氏)

問われる今後の「アウトプット」

ASIに向けてどのような企業戦略を取るのか。その具体的な道筋も不透明だ。孫氏は「莫大なお金もかかりますからパートナーと資金を出し合ってやりますし、また技術においてもパートナーと提携しながらやっていく」と述べるにとどめた。

ASIについて、孫氏の右脳がフル回転して生み出したという解法が、どのような形で具体化されていくのか。今後のアウトプットこそが、ソフトバンクグループの真価を問うものとなるだろう。

石井 徹:モバイル・ITライター

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