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「おふたりさま夫婦」だから起る「"相続"の大問題」 妻が夫の遺産を100%相続できないって、本当?

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 7時40分

おふたりさまの場合、子どものいる夫婦以上に、相続がもめごとやトラブルに発展するケースもありえるのです(写真:8x10/PIXTA)

結婚しても子どもをもたない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増えている。

共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。

そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。

著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。

その松尾氏が、今回は「子どもがいない『おふたりさま夫婦』だから起こりうる「"相続"の大問題」について解説する。

「おふたりさまの相続」は気楽でも安心でもない!

人が亡くなると、その時点から「相続」がはじまります。

【ひと目でわかる】子どもがいない「おふたりさま夫婦」の場合、"相続"はいったいどうなる?

故人の遺産をめぐり、家族や親族がもめにもめて、骨肉の争いに……。なんていうケースは、ドラマの中の話だけではなく、現実世界でもめずらしいものではありません。

ちまたの「相続争い」の話を聞いて、子どものいないおふたりさま夫婦は、「うちは夫婦だけだから、遺産でもめることもないし気楽だね」などと、安心しているのではないでしょうか?

でも、それは「あまりに大きな間違い」です。

おふたりさまの場合、子どものいる夫婦以上に、相続がもめごとやトラブルに発展するケースもありえるのです。

ふたりで一生懸命ためてきた財産が、ふたりのものでなくなるかもしれない。

それがおふたりさまの相続なのです。

おふたりさまの相続について、相続の基本ルールを紹介しながら説明しましょう。

まずは「相続の大原則」といえるルールは?

まずは「相続の大原則」ともいえるルールです。

●故人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となる

配偶者はつねに相続人(相続する権利がある人)になります。

つまり、夫(妻)が亡くなれば、妻(夫)は必ず相続人になるわけです。

この大原則を柱に、次に紹介する①②③の順位で、相続人が加わっていきます。

①故人に子どもや孫(直系卑属)がいる場合、配偶者とともに相続人となる

子どもがいる場合は、子どもも相続人に加わります。子どもがすでに亡くなっていて孫がいる場合、孫が代わりに相続人になります。

子どものいないおふたりさまの場合、この①は関係ありませんね。

問題になるのは、次からです。

②故人に子どもや孫がいない場合、故人の親や祖父母(直系尊属)が相続人となる

故人に子どもがいない場合、親が存命であれば配偶者とともに相続人に加わります。

つまり、おふたりさま夫婦のどちらかが自身の親より先に亡くなったら、その親も相続人になるわけです。

そうなると、夫婦の財産といえども、親にも相続の権利が発生します。

子どものいる夫婦の場合、親は相続人になりませんから、ここは大きな違いです。

とはいえ、一般的な寿命を考えれば、親より先に亡くなる可能性は低いといえるでしょう。

そして最も問題になるのが、次の③です。

兄弟姉妹が相続人に加わる

③故人に直系卑属も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹(傍系血族)が相続人となる

子ども(孫)、親(祖父母)がいなければ、兄弟姉妹が相続人に加わります。

②の親と違って、故人の兄弟姉妹が存命している可能性は、かなり高いのではないでしょうか。また、仮に兄弟姉妹が亡くなっていても、子ども(故人の甥や姪)がいれば、代わりに相続人になります。

そうなると、おふたりさま夫婦の夫が亡くなった場合、妻だけでなく「夫の兄弟姉妹(甥姪)」も相続人に加わることになります。

相続割合は「親なら3分の1」「兄弟姉妹なら4分の1」

たとえば、おふたりさまの夫が1000万円の財産を残して亡くなった場合、妻が750万円、夫の兄弟姉妹が250万円を受け取ることになるのです。

「遺産なんていらないから、相続放棄するよ」と言ってくれる場合もあるでしょうが、「うちもいろいろ物入りだから、もらえるものならもらいたい」という場合も少なくありません。

たとえ相続放棄してもらえる場合でも、遺産分割協議書をつくり、判をついてもらうという面倒な手続きは必要です。

兄弟姉妹にも遺産を渡すことになれば、ふたりで準備してきた老後資産が減り、老後の生活も成り立たなくなるかもしれません。

ふたりで築いてきた財産を、配偶者に100%渡す方法はないのでしょうか?

配偶者に100%財産を残す方法は、簡単です。

それは「遺言書」を書いておくこと。

法的に認められる遺言書に「妻にすべての財産を残す」という旨が書かれてあれば、遺産が兄弟姉妹に渡ることはありません。また、遺産分割協議書も必要ありません。

親が存命なら「遺留分」がある

ただし、相続には「遺留分の減殺請求」というルールがあり、たとえ遺言書があっても、一定割合額を請求する権利をもつ場合があります。

ただし、これが認められているのは配偶者、子(孫)、親(祖父母)であり、兄弟姉妹には権利がありません。

これまで説明してきたように、相続人が配偶者と子どもという「子どもありの夫婦」と違って、おふたりさまの場合は親や兄弟姉妹も相続人に加わる可能性があるため、遺言を書いておくことでスムーズな相続になります。

もちろん、このことをご存じですでに準備しているおふたりさまもいらっしゃいますが、驚くほど多くの人たちが、このことを知りません。

何も知らずに遺言書という準備もしないままでいると、いざというときにトラブルやもめごとになりかねません。

ですから、おふたりさまこそ、遺言書を書いておくことをおすすめします。

いいえ、おすすめどころではありません。

将来に禍根を残さないためにも「おふたりさま夫婦には遺言書が必須」なのです。

松尾 拓也:行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家

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