1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

NHK「赤字でも黒字でも非難殺到」が意味すること 「儲けすぎ」から一転「どうして赤字なのか」

東洋経済オンライン / 2024年6月28日 19時50分

インターネットでは、アルゴリズムの進歩により、あらゆる情報が「個人の興味」に応じて出し分けられるようになった。そこへ身を委ねるライフスタイルが定着するほどに、現代人は「自分に合った情報」に浸る心地よさを享受している。

そうした中においては、マスメディアの指向する「正しい報道」や「価値のある報道」は、あまり重要視されない。あくまでユーザーは「自分にとって都合のいい情報や論調」が欲しいのであって、「正しい」とか「価値がある」などと他者に判断されることに嫌悪感を覚える。その判断者が大きければ大きいほど、それらへの反発は強まり、不信感は増していくのだ。

このようにメディア接触をめぐる態度が変わるのと並行して、テレビの代替となるサービスが台頭してきた。YouTubeにレコメンドされるままに連続再生すれば、テレビと同様に「動画コンテンツの垂れ流し」を味わうことができる。

ただ単に情報のシャワーを浴びたいだけならば、制作者が誰であるかは関係ない。放送局のコンテンツである必然性を感じさせられなければ、あえて受像機を通して、テレビ番組を見る必要はないのだ。

そうした意識の変化に、ようやく放送局側も気づいたのか、ここに来てネット配信サービスに注力し始めた。NHKは「NHKプラス」を開始したほか、民放各社も「TVer(ティーバー)」を通して、気軽にリアルタイム配信や、見逃し視聴ができる環境を整え始めた。

しかしながら、こうした取り組みは、さらなる競合との戦いの序章に過ぎない。NHKのみ見られるサービスは、あくまで局ブランドの専門店でしかない。Netflixのような、ブランド横断型のサービスと比べると、まだまだ優位性がアピールできていないように思える。

視聴者のモヤモヤの解消に真面目に向き合うべきだ

このように、NHKそのものに対するモヤモヤと、テレビ業界全体への違和感、そしてネット社会になったことによる、コンテンツ消費の変化などが複雑に入り組んだ結果、「どう転んでも、たたかれる」といった雰囲気が醸成されたのではないか。このサンドバッグ状態から抜け出すために、NHKにできることがあるとすれば、やはり地道に「受信料を払う価値のある対象だ」と認識してもらうしかない。

NHK契約者の中にも、残念ながら「民放を見るために、仕方がないから契約している」という視聴者は、それなりの割合で存在するだろう。そうした人々は、チューナー不要のTVerの誕生によって、いつNHKを解約するかのカウントダウン状態にある。

今回は「値下げ」が赤字要因とされているが、契約者数の減少もまた、さらなる減収につながる大きな要素となる。これまで以上に、優良コンテンツの制作を進めるなどの対策を取らない限り、「NHK離れ」は確実に進んでいくはずだ。

城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください